古事記スクール

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小説・新古事記

【新古事記141】求人募集

航は西口さんが何気なく言った言葉を今でもよく覚えている。 「40歳を過ぎたあたりから人生が崩れるんだよ」 当時は自分にはなんの関係もない言葉のように思えたが、今の自分はどうだろうか? 社会からドロップアウトした自分。当時、こんな人生を予想してい…

【新古事記140】チリ人妻を持つ男

(西口さん、元気にしているだろうか?) 航の脳裏に一人の男性が浮かび上がってきた。 航は20代前半の頃、ホテルの警備の仕事をしていた。夜勤があり、拘束時間も長く、生活のリズムはめちゃくちゃだった。 けれど、同年代の若い同僚が多く、今思うと楽しい…

【新古事記139】20年

五十嵐さんが姿を消すと、フロントバックには航と掛川さんの2人になった。 「五十嵐さん、お昼の11時から勤務してるんですよ? なのに全然休もうとしないんです」 「五十嵐さんの立場だと、どれだけでもやることはあるでしょうね」 航は自身がサラリーマンだ…

【新古事記138】真夜中のメッセージ

「ちょっと…イザナギさん? いくらなんでも… 子供を斬り殺しちゃうって…」 陽はその展開に衝撃を受けた。 「まぁ奥さんの命を奪ってるわけで… オレ、この火の神は好きになれないなぁ。 …にしても斬り殺さなくても良いと思うんだが…」 22時50分 「ありゃ、も…

【新古事記137】動揺するイザナギ

大火傷を負ったイザナミは病に伏した。するとイザナミの吐瀉物、尿、便からも神様が生まれた。 「・・・・・ なんだ、この汚い話… ゲロが鉱山の神、おしっこが水の神、ウンチが土の神になりました…だって? なんとも受け入れがたい…」 横たわるイザナミを前…

【新古事記136】国産み

失敗続きのイザナギとイザナミだったが、宇宙の神様のアドバイス通り「男性であるイザナギから先に声をかける」と事態は好転した。 まずイザナミは日本の国土となる島々を産んだ。これを「国産み」というらしい。 「ははっ 島を産んじゃうなんて… ちょっと想…

【新古事記135】45歳のプレッシャー

1時15分 「掛川君、先に休憩に入っちゃっていいよ」 五十嵐さんはパソコンの画面から目を離さずに言った。 「大丈夫ですか? 五十嵐さん、お昼からの勤務ですよね? 僕は夕方からだから、五十嵐さんが先の方が良くないですか?」 「うん、キリのいいところま…

【新古事記134】僕たちの失敗

イザナギとイザナミはこの世の成り立ちを支える宇宙の神々に相談した。 すると宇宙の神々は占いをおこなった。 陽は笑った。 「神様が占いに頼るって…いったいその占いに答えるのは誰なんだろ? それにしても… なんかこう…頼りない神様たちだよな。普通、神…

【新古事記133】凸凹

陽は「古事記まんが」を読み進めた。 「えーっと、なになに? イザナギとイザナミはドロドロした地上を整えるように命じられ、矛を渡された? つまり、世の中の成り立ちは出来てきたけど、まだ地上は固まっていなかったということなんだろうな。 でも…矛でど…

【新古事記132】古事記へのいざない

21時35分 ブルルブルル 枕元に置いたスマホが震えた。浅い眠りに入りかけていた陽は一瞬で覚醒し、すぐスマホを手に取った。 メッセージの差出人は航だった。 「おい、聖…」 そう言いかけて陽は慌てて口を閉じた。聖は隣で静かな寝息を立てていた。 陽は聖を…

【新古事記131】差

「うわー、古事記ってなんなんだ!? なほほんのこの感動はなんなんだ!?」 あたしもこなんさんに会いたいわー!! ぬおーーー」 聖は立ち上がって頭をかきむしった。 「…聖、落ち着けって…。 でも、奈帆ちゃんのこのメッセージ。 なにかをつかんだというか…

【新古事記130】なほほんとこなん

聖が結婚の話に触れたので陽はドキッとした。そして覚悟を決めた。 「あのさぁ…聖ぃ…」 その時だった。 「あーーー!!」 聖は大声を出した。 「どした?」 「なほほんからメッセージ来てないかな? もう古事記のお話会、終わってるでしょ?」 聖はスマホを…

【新古事記129】結婚願望

20時30.分 「ふうー、お風呂気持ち良かったー ん?ヨウ、何してんの?」 聖が陽に話しかけた。陽は真剣な表情でスマホと向き合っていた。 「うん、氷川さんにメッセージ送ろうと思って」 「え?氷川さんに? なんて?」 「神様の名前が長すぎて、冒頭から古…

【新古事記128】やさしい世界

「はいはーい、ご飯ですよー 読書は中止してくださーい」 聖が夕食を運んできた。陽は本を閉じソファの上に置いた。 「いただきまーす」 「いただきまーす」 食事を始めるとすぐ聖が尋ねてきた。 「どう?その本?」 「うん、前のよりずっと読みやすそうでは…

【新古事記127】古事記まんが

18時25分 「聖、帰り遅いな…」 陽はだんだん不安になってきた。普段、聖は寄り道などせずにまっすぐ帰ってくることがほとんどだった。 ガチャ 「ただいまー ふぅ、遅くなっちゃったね、すぐご飯作るから」 「お、おかえり…」 聖を目の前にして、陽は不安を感…

【新古事記126】絶対

12時10分 少し早めの昼食を済ますと、陽は例の古本屋に向かった。 「宗教・神話」のコーナーに足を運び、棚を眺めていた。 「うーん、ないなぁ…」 目当ての「古事記まんが」は見つからなかった。ネットでも調べたが中古での取り合いはないようだった。 「人…

【新古事記126】怪しいメール

石松さんと航は更衣室で並んで着替えていた。 石松さんはジャケットを脱ぎネクタイを外した。制服のパンツを履き替えるとワイシャツ姿のまま更衣室を出て行った。 「氷川さん、お先に失礼します」 航は答えた。 「はい、お疲れ様でした。またよろしくお願い…

【新古事記125】先生

「河村ちゃん、パクちゃんみたいになっちゃダメよ」 聖は笑いながら河村ちゃんに言った。河村ちゃんは苦笑いをしていた。 聖は航の方に体を向けた。 「氷川さん、昨日は浅間がお世話になりました」 そういうと深々と頭を下げた。 「聖さん、それ、なんかすで…

【新古事記124】雨上がりの朝

6時00分 航はゴミをまとめ、通用口から外へ出た。すでに雨は上がっていた。雨に濡れた集積ボックスの蓋を開け、ゴミを放り込む。 航はホテルの正面玄関に移動した。傘立てに濡れた傘が何本も刺されている。傘を集めると、再び通用口から外に出て、傘を広げ並…

【新古事記123】寝不足

「朴さん、戻りませんね。 電話してみましょう」 石松さんはそう言うと受話器をとった。その時だった。 「すみませーん」 朴さんが仮眠から戻ってきた。20分ほど時間をオーバーしていた。 「氷川さん、すみません。休んでください」 「いえ、いえ。では石松…

【新古事記122】鞄の中身

1時20分 ロビーから騒々しい笑い声が聞こえてきた。航はフロントへ出た。少し遅れて石松さんが航の後を追った。団体の宿泊客が帰ってきたところだった。出張のサラリーマンだろうか。人数は10名ほどだった。 「えーと、1005」 「お名前をいただけますか?」 …

【新古事記121】ミクロネシアと日本語

「へー、これは確かに美しいですね」 パソコンに映し出された映像を見て航は言った。 「今、ミクロネシアに行く日本人は年間1000人くらいじゃないでしょうか? 戦前、ミクロネシアは日本が統治していた時期があったんです。30年間くらいかな?」 「え?そう…

【新古事記120】ミクロネシア

22時50分 「おはようございます」 着替えを終えた航はフロントバックに入っていった。 「おはようございます。 あー、よかった。氷川さん、いつもより遅いから何かあったのかと思った」 今日の勤務はビートルズ好きの69歳、石松さんと一緒だった。 「すみま…

【新古事記119】雨

22時35分 新幹線を降りた航は、人波を交わし急いで改札を抜けた。 駅の外に出ると雨が降っていた。大きなペデストリアンデッキの屋根の下を走り、屋根が終わると職場まで濡れながら走った。 暗証番号を入力し、社員用通用口から建物に入ると、航は一息ついた…

【新古事記118】メッセージ

「氷川さん、こんばんは。 今朝はお疲れのところありがとうございました。実はあの後『寝不足になる古事記』という本を古本屋で購入しました。 聖と二人で飲んでみたのですが、正直なところ古事記の魅力が全くわかりません。 古事記の魅力って何なんでしょう…

【新古事記117】夜中の新幹線

航は慣れない手つきで新幹線のチケットを購入した。 東京から新幹線に乗って職場に向かうという選択は、普段の航なら考えないことだった。 行き過ぎた倹約家の父に育てられた航には、お金で時間を買うという概念がなかった。むしろ罪悪感すらあった。 航は、…

【新古事記116】ガリレオ

「古事記に出てくるオノコロジマのことですけど…」 航が続けると鳥海さんが聞いた。 「イザナギとイザナミが 生んだオノコロジマですか?」 「はい、そうです。 アレ、僕は『自ずから転がる』からオノコロジマって名付けたんだと思うんですね」 「自ずから転…

【新古事記115】かぐや姫

時間が進み、4人はすっかり打ち解けていた。 鳥海さんが言った。 「古事記で火の神様が母親のイザナミ焼き殺しちゃうでしょ? あれ、怖いですよねー」 航が言った。 「ああ、ヒノカグツチですね」 江本さんが聞いた。 「ヒノカグツチ?火のカグってどういう…

【新古事記114】奇貨居くべし

「失礼します」 障子が開き、和モダンな雰囲気の個室に店員が入ってきた。 「おー、きましたね!」 吉川さんが嬉しそうな声を上げた。 店員が肉とタレの説明をした後、蒸籠に肉と野菜を丁寧に並べていった。 航が言った。 「鴨肉もあるんですねー」 「はい、…

【新古事記113】古事記の扉

「おーー」 聖はスマホの画面を眺めながら感嘆の声をあげた。 「どしたの?」 陽は聞いた。 「なほほん、あびこなんさんのお話会に申し込んだって」 「え?赤ちゃんは? ってゆーか、あびこみなみさんだろ」 「SNSであびこなんさんに連絡したら、すぐにこじ…