「へー、これは確かに美しいですね」
パソコンに映し出された映像を見て航は言った。
「今、ミクロネシアに行く日本人は年間1000人くらいじゃないでしょうか?
戦前、ミクロネシアは日本が統治していた時期があったんです。30年間くらいかな?」
「え?そうなんですか?」
「行けばわかりますが、親日家の多い国ですよ。日本からの移民も多かったんです。現地には日本語かと思うような言葉もたくさんあります」
「へー。例えばどんな言葉ですか?」
「甘いをウマイって言ったりしますね。
ガッコーとかセンセイとか。デンワ、デンキ…コウシャホウとかね」
「コウシャホウ?高射砲ですね?」
「そうです。他にもデンシンバシラ、ヨーイドン…
アジノモトにチチバンドとかね」
そう言って石松さんは笑った。航もつられて笑った。
さらに石松さんは続けた。
「多くの人がわかっていませんけど、いや知ろうともしないけど、日本の統治と西洋の統治は全くやり方が異なります。
西欧の植民地政策は搾取を目的としています。人を人として扱わず、奪うだけ奪う考え方です。
それに対し、日本のやり方は、経営統治です。インフラを整え、教育を推進し、産業を根付かせます。だから日本が統治した国は国力が高まり豊かになるのです」
航は頷いて聞いていた。
「ミクロネシアが最も裕福だったのは、日本が統治していた頃なんです。日本ってそういう国だったんです。
けれど…
多くの人が日本は侵略戦争をしたと思ってるでしょう?そんなわけないじゃないですか?
戦後、国のために働いた兵隊さんはあっという間に悪者にされてしまった。
国のために懸命に働いてくれたのにです。なんともやりきれない思いがします。
日本という国は、もう…滅亡してしまったのかもしれません。
私はそんな風に思うんです」
そう語る石松さんの横顔は寂しそうだった。