「河村ちゃん、パクちゃんみたいになっちゃダメよ」
聖は笑いながら河村ちゃんに言った。河村ちゃんは苦笑いをしていた。
聖は航の方に体を向けた。
「氷川さん、昨日は浅間がお世話になりました」
そういうと深々と頭を下げた。
「聖さん、それ、なんかすでに…
浅間さんの妻っぽいです。
いや、お母さんっぽいかも」
河村ちゃんがそう言って笑った。
「え?そんなつもりじゃ…
なんか照れる」
聖は恥ずかしそうに言った。
航が言った。
「いえいえ。こちらこそ楽しかったです。
それに、お二人が古事記に興味を持ってもらえて嬉しいです」
「そうなんです。氷川さんにメッセージ送るように急かしたの私なんです。
この間、龍橋神社に行った時にお巫女さんや楽しい兄妹に古事記の話を聞いて…一気に興味を持つようになりました。
それに…」
聖は声のトーンを落として言った。
「氷川さん、古事記の先生なんですよね?」
航はあたりに目をやってから小さく2回頷いた。それを見て聖は察した。
河村ちゃんが口を挟んできた。
「え?先生って誰がですか?」
「か、河村ちゃん!違うの!!
センセーションの話をしていたのよ。
センセーショナルなセンセーション」
「なにそれ?ダサいラッパーみたい」
「ぬっ!?生意気なっ!!
くらえ、先制攻撃!!」
聖はそう言うと河村ちゃんの両頬を指でつまんで引っ張った。
「ひずぃりしゃん、やめてくらしゃい」
聖は指を離した。
「河村ちゃん、お肌すべすべねー、羨ましいわ」
「ひーちゃーーーん、もう8時過ぎたんですけどー?」
朴さんがフロントから顔を出して言った。
「あらー、パクちゃん、ごめんなさーい。
ねーねー、見てー。河村ちゃんのこのお肌」
「どれどれ?」
朴さんは河村ちゃんに近づくと両頬を引っ張った。
「やめてくらさーい」
「ちっ!たしかにみずみずしいわね。
ひーちゃん、私たち…
いつのまにかお肌の曲がり角を曲がっていたようね」
「うんうん、時の流れは残酷よね」
聖は腕を組んで頷いた。航が笑った。
「朴さん、お肌の曲がり角って…
よくそんな日本語知ってますね」
「私の日本語の先生、おじいちゃんでしたからねー。
さっ、氷川さん、帰りましょう。
石松さんも、帰りましょう!!」