22時35分
新幹線を降りた航は、人波を交わし急いで改札を抜けた。
駅の外に出ると雨が降っていた。大きなペデストリアンデッキの屋根の下を走り、屋根が終わると職場まで濡れながら走った。
暗証番号を入力し、社員用通用口から建物に入ると、航は一息ついた。バッグからタオルを出し、頭と顔、そして体を拭いた。
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陽はベッドに腰を下ろし、航からのメッセージを確認した。
聖は待ちきれない様子で、陽の背後から左肩に顎を乗せ、スマホの画面を覗こうとしていた。
「聖、慌てんなって。今から読むから…
えーと…」
陽は声を出して航のメッセージを読んだ。
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「『古事記まんが』っていうのね。氷川さんのオススメ本は」
聖はそう言うと、陽のadidasのジャージを羽織った。
「聖…何やってんの???」
「私、今から古本屋さん行ってくる。あそこ11時までやってるから、まだ間に合うよ」
陽はびっくりした。
「え?今から?やめとけって!!」
「善は急げだよ。陽の自転車、借りるね」
「待て待て待て待て」
陽は聖の肩を掴んだ。
「しょうがない、オレがいくよ」
「え?いいの?」
陽は玄関を開け外の様子を伺った。
「あ…」
「雨だね…」
聖は言った。
「ヨウ、ごめん。本は明日にする」
「うん、そうしよう。
それに、明日も聖は朝早いし」
陽と聖はベッドに戻った。