1時20分
ロビーから騒々しい笑い声が聞こえてきた。航はフロントへ出た。少し遅れて石松さんが航の後を追った。団体の宿泊客が帰ってきたところだった。出張のサラリーマンだろうか。人数は10名ほどだった。
「えーと、1005」
「お名前をいただけますか?」
「小林です」
航はキーボードを打ち、部屋の番号と宿泊者を照合した。
「小林様、お帰りなさいませ。ごゆっくりどうぞ。次の方こちらへどうぞ」
航は部屋の鍵を渡した。
「えーと、部屋の番号なんだっけ、オレ?」
男性はベロベロに酔っていた。
「お客様、お名前いただけますか?」
「うー、佐藤でーすっ」
「ありがとうございます。こちらの鍵でございます」
航と石松さんは飲んで帰ってきた宿泊客を二手に分かれさばいていった。
「明日、何時にします」
「8時にロビー集合な」
「了解しましたっ」
「おまえ、寝坊するなよ」
「大丈夫でありますっ!!」
チンッ
エレベーターが到着すると騒がしい宿泊客は、その中へ姿を消していった。
そのすぐ後、少し派手な格好をした1人の若い女性がホテルに入ってきた。
女性は航と石松さんを一瞥するとすぐ目をそらし、エレベーターの呼び出しボタンを押した。
女性がエレベーターに姿を消すと石松さんが言った。
「あれ、ホテトル嬢ですよ。鞄を2つ持ってたでしょ?」
「ホテトル嬢は鞄を2つ持ってるんですか?」
「そうです」
「鞄の中には何が入ってるんですか?」
「さあ?私にもわかりません」
ロビーに誰もいなくなると、石松さんと航はフロントバックに戻った。