18時25分
「聖、帰り遅いな…」
陽はだんだん不安になってきた。普段、聖は寄り道などせずにまっすぐ帰ってくることがほとんどだった。
ガチャ
「ただいまー
ふぅ、遅くなっちゃったね、すぐご飯作るから」
「お、おかえり…」
聖を目の前にして、陽は不安を感じていた自分が少し恥ずかしかった。
「はい、これ」
聖はバッグを開けると一冊の本を陽に渡した。包装紙でカバーが掛けられており題名はわからなかったが、陽はすぐに察した。
「もしかして…」
陽はすぐにページをめくった。陽の思った通り「古事記まんが」だった。
「買ってきたの?」
陽が聞くと聖はキッチンに立って手を動かしながら言った。
「うん、帰りに駅ビルの本屋さんでね。
陽が古本屋さんになかったって連絡くれたから
本屋さんに寄ってたら帰るの遅くなっちゃったの、ごめんね」
聖は続けた。
「どうしても読みたかったし、気になったし。
それに…
氷川さんにわざわざ聞いてまで教えてもらったからね。
もしかしたら陽は新品で買うなんてもったいないと思ってるかもしれないけど…」」
陽はギクリとした。
「そ、そんなこと思ってないよ」
そして少し間をおいて言った。
「これ、オレが先に見ちゃっていいの?」
「もちろん。当たり前じゃないの。
ま、すぐご飯できるけどねー」
陽はページを開いた。
「へー、イラストだらけでわかりやすそうだねー。
ま、タイトルが「古事記まんが」だもんな」
「そうなのそうなの。私も帰りの電車で少し読んだけど、読みやすそうよね」
陽は「古事記まんが」を読み始めた。