「はいはーい、ご飯ですよー
読書は中止してくださーい」
聖が夕食を運んできた。陽は本を閉じソファの上に置いた。
「いただきまーす」
「いただきまーす」
食事を始めるとすぐ聖が尋ねてきた。
「どう?その本?」
「うん、前のよりずっと読みやすそうではある。
イラストかわいいし。きっと作者の方もオシャレな感じの人なんだろうなー。
ノブナガさんとは真逆のような人だと思う」
「わー、また会いたいね。
かなぶん、元気かなー」
「あの二人は地球最後の日でも元気なんじゃない、きっと」
それを聞いた聖は笑った。陽は続けた。
「それと、神様って1人2人じゃなくて一柱二柱って数えるんだな。そういうの面白い」
「それ、龍橋神社のお巫女さんが言ってたよ」
「そうだっけ?よく覚えてるな、聖は。
でも…」
「でも?」
「どうやら冒頭に「この世のはじまり」が描かれているってことはわかったけど、何が書いてあるのかさっぱりわからない。
あと神様の名前がなぁ…。平気で10文字超えてくるもん。覚えられないから全然読み進められない。先が思いやられる」
「うんうん、わかる。
私もそう思ったよ」
「アポロンとかゼウスとか、そっちの方がまだ馴染みあるし、名前も覚えやすいよなぁ」
「確かにねー。
アキレス腱のアキレスとか覚えやすいもんねー」
陽は話題を変えようとした。
「聖、ところでさ…」
「あっ、うん、なほほんのことでしょ?
今日だよね、あびこなんさんのお話会」
「あっ、そ、そうだね。赤ちゃん連れてて大丈夫だったのかなー」
「大丈夫でしょ。
色々言われるけど…みんな優しいよ、ほとんどの人はね。
赤ちゃんにイラつくとか…
そんな人間の出来ていない人、ほんの僅かだと思うのよ、わたしは」
それを聞いた陽は航との会話を思い出していた。そして言った。
「聖はこの世を信頼してるんだな」
「うん、信頼してるよ。
さ、ヨウ、ご飯食べちゃおう」