2019-07-01から1ヶ月間の記事一覧
陽は腰掛けると航に話しかけた。 「夜勤明けでお疲れなのに申し訳ありません。さっそくなんですけど…」 航は笑いながら言った。 「浅間さん、とりあえずなにか頼みませんか?」 陽はハッとした。 「あ、そうでした! それ、美味しそうですね」 航の前には大…
店内はアンティーク調の作りで、控えめな照明も相まって落ちついた雰囲気を醸し出していた。航はタイムトリップしたような気持ちになった。 航は革張りの椅子に腰を下ろし、アイスコーヒーを注文した。そして、SNSで陽へメッセージを送った。 「南口の少名彦…
09時50分 航は自転車に乗り、駅前のカフェに向かって出発した。 駐輪場に自転車を止める。目的のカフェに向けて歩き出すと、目の前をスーツ姿のビジネスマンか行ったり来たりしていた。新幹線が止まるこの駅は、オフィス街だが近くに大きなコンサート会場や…
「え?浅間さん、この後、氷川さんとカフェ行くんですか?」 陽と聖の会話を聞いた掛川君が話しかけてきた。 「うん、昨日の夜、色々話してたら面白くてさ。話し足りないんだけど、毎回勤務が重なるわけじゃないから。無理言ってお願いしたんだ」 「いいなー…
07時45分 「おはようございます」 聖が出勤してきた。航と陽は掛川さんと一緒に並んでフロントに立っていた。 「あの〜、氷川さん…」 「ん?なんですか?」 陽は申し訳なさそうに言った。 「この後、時間ありませんか?」 「この後って、勤務の後にですか?…
07時15分 「浅間さん、戻ってきませんね。 今までこんなこと一度もなかったのに」 掛川さんは不思議そうに言った。仮眠に入った陽は、時間になっても戻らなかった。 「ちょっと僕、見てきます」 航はそう言って掛川さんの了承を得ると、その場を外れた。 ---…
仮眠に入った陽は横になっても眠ることが出来なかった。 「オレの幸せって…なんなんだろう…」 陽は航に言われた言葉を思い出していた。 「やっぱりアレだよな… 聖と結婚したいし、聖を幸せにしたいよな。 そのためには、、、 やっぱりネックは給料だよなぁー…
03時50分 「おはようございます」 「掛川くん、おはよー。 寝れた?」 掛川くんは大きなあくびをした。 「それが… 氷川さんが貸してくれたアドラーの本が面白すぎて… 寝ないで読んじゃいました。最後まで」 そう言う掛川君の手には浅間さんからもらった本が…
「セミナーって…もちろんすべてが無駄だなんて思いませんが、実態の無いビジネスかもしれませんね。 やってるうちは気持ちいいんですよ。「自分は今、みんなの知らない世界に来てるんだぞ」「お前たちが遊んでる間、俺は成功者の話を聞きに来てるんだぞ」っ…
少しの沈黙ののち、航が口を開いた。 「浅間さんの理想の人生ってどんなですか?」 「え?理想の人生ですか???」 陽はその質問にすぐには答えられなかった。そしてしばらくして口を開いた。 「そうですね。好きな仕事をしていて、お金の心配がなく、子供…
「知らない人に答えを求める?」 航が続けた。 「僕もそうでしたが、周囲に目標となる大人がいなければ、外に答えを求めるのは当然でしょう。 僕は子供の頃、幸せそうな大人を見たことがなかった。 だから、社会に出た時点で人生が終わる…そう思っていました…
「僕には… 僕にはもう遠回りしている時間なんてありません。 僕は33歳です。掛川君や李君とは違います」 それを聞いた航はいたずらっぽく言った。 「僕は45歳ですけどね〜〜」 「あっ… いや、なんか すみません」 それを聞いて航は笑った。釣られて陽も笑っ…
航は続けた。 「浅間さん、僕が会社の社長ならあなたを真っ先に採用します。 組織って能力も大切ですが、それ以上に大切なものがあると思うんです。 あ、浅間さんの能力が低いと言ってるわけではありませんよ。 あなたがいるおかげで、この職場はみんなが気…
陽の表情が暗くなったのを航は見逃さなかった。 「浅間さん、どうかしましたか?」 「いえ… あのぅ、掛川くんとか李くんとか…若い彼らと話していると敵わないなって。 しかも僕と違って向上心があって、その…自己啓発の本も読んでいる。 李くんは、パソコン…
読みやすいまとめ読み。21話から30話まで、です。 https://kakuyomu.jp/works/1177354054889904426/episodes/1177354054890425771
22時45分 「おはようございます。今日もよろしくお願いします」 フロントバックに航が入ってきた。 航は掛川さんの姿を見つけると、バッグから本を取り出し渡した。 「これ、アドラー心理学の本です。もしかして買っちゃいました?」 「ああ、いえ、まだ買っ…
今後のイベントの予定です。 ぜひご参加ください^ ^ 7月20日 イラストでわかる!古事記スクールin原宿 イラストだから誰でも簡単にわかっちゃう古事記です。神話部分を一気に駆け抜けます!! 日時:7月20日9:00〜12:00 場所:原宿駅徒歩5分(詳細はお申し…
聖は開いた雑誌のページを陽に向けてきた。 「ここ!ここ!」 陽は雑誌を覗き込んだ。 「あれ?この人???さっきの…」 『スピリチュアルに555万円を投じた男! シキカワ☆ワンダラーの突撃スピリチュアル』というコラムに見たことのある人物の写真が載って…
平日午後の電車は空いていた。陽と聖は並んで座席に腰かけた。 聖はさっき手に入れた雑誌をパラパラとめくっていた。 「それ、なんの雑誌?」 陽が聖に聞いた。 「占いとか、スピリチュアルとか…そっち系の雑誌だね。 普段こんなの買わないけど、『龍特集』…
お店を出るとそれぞれが別れを告げた。 「ひーちゃん、連絡先交換しよ」 「うんうん」 聖とカナコはスマホを取り出し連絡先を交換した。そして、カナコは聖をハグした。 ノブナガもさりげなく聖とハグしようとしたが、カナコが鋭い眼光でそれを制した。 「広…
「ヨウくん、とにかくさっさと結婚した方がいいよ。ひーちゃん、披露宴には私も呼んでねー」 聖は笑いながら即答した。 「ぜひぜひ!!」 「披露宴?カナコは家族なんだから挙式にも参列してもらうぞ…」 ノブナガが口を挟んできた。 「まだ言っとんのか!こ…
いつもブログをお読みいただきありがとうございます。 この一週間、本当に忙しくすごしていました 7月5日:神社ミーティング 神社仲間との神社ミーティング。 10年来の神社仲間と今後やっていくプロジェクトについて話しました。 彼は10個くらい年下で…
「ちょっと待った!! 婚約など、そんなことはオレが許さん!! 聖ちゃん、そんなモヤシのような男とは別れてオレと付き合わないか?」 ノブナガが帰ってきた。 「お兄ちゃん!! せっかく良いとこなのに邪魔しないでよ!! それに、なんでひーちゃんとお兄…
「で、二人はどこで出会ったのー?」 「えー、職場ですよ、職場」 「ふーん社内恋愛ってやつかぁ で、仕事、何やってんの?」 「ホテルのフロントです」 聖とカナコはすっかり打ち解けていた。 「私、もともと、居酒屋で働いてたんです。そこに今の上司に当…
「なんだか知らないけど、私の運勢を見て欲しいだの、使命を教えてくれだの、自分が何者か教えて欲しいだの…そんなくだらない電話がたくさんかかってきてね。 鬱陶しいから電話線を抜いたんだ」 「ほう?なぜ急に…」 「それがわからないんだよ。 たしかにオ…
話がひと段落すると広末さんが言った。 「ところで君たち、お腹は減ってないの?」 するとノブナガが即答した。 「腹ペコです」 広末さんは笑った。 「ノブナガ君のそういう素直なところ、好きだよ。みんな、好きなもの頼んでいいよ… と言っても、頼みづらい…
広末さんは続けた。 「そしてゴネてゴネてゴネて…ついに租借を諦めさせたんだ」 カナコが目をキラキラさせて言った。 「素敵っ!!」 「古事記には「国生み神話」が描かれている」 「国生み神話???」 「イザナギ、イザナミという夫婦神が島々を生むんだけ…
「高杉晋作は長州藩の人だよ」 広末さんは言った。 「藩に無断で軍艦を購入したり、突如出家したり、脱藩して投獄されたりしたって話だよね。ノブナガ君の言う通り、まさにロックな人だね」 ノブナガは言った。 「さすが広末さん!!わかっていらっしゃる!…
聖は心配そうに言った。 「でも、お兄さんに…怒ってる明智光秀さんが憑いてるって…」 「そ、そんなもの恐るに足らん! オレは第六天魔王の生まれ変わりだぞ!! カーッカッカッカッカッ!!」 ノブナガは強がって笑った。 「でも、名前がノブナガで明智光秀…
聖は広末さんに聞いた。 「どういうことですか?」 「ヒジリっていうのは、もともと「日を知る」ということらしいんだ。日って太陽のことね。 日を知り、祀りを司る存在。つまりヒミコのことだね」 陽は聞いた。 「ヒミコって邪馬台国の?」 「僕はヒミコっ…