「氷川さん、こんばんは。
今朝はお疲れのところありがとうございました。実はあの後『寝不足になる古事記』という本を古本屋で購入しました。
聖と二人で飲んでみたのですが、正直なところ古事記の魅力が全くわかりません。
古事記の魅力って何なんでしょう???
失礼かと思いましたが(聖がせっつくのでwww)メッセージ送らせていただきました。
これから夜勤ですね。お仕事頑張ってください。またお話出来るのを楽しみにしています。浅間」
航は陽からのメッセージを読み、嬉しくなった。30代の若者が古事記に触れる…それは充分価値のあることのように思えた。
航は陽に返信した。
「こちらこそありがとうございました。
そして、お二人が古事記に興味を持たれたこと、とても嬉しく思います(返事が遅くなりごめんなさい)。
『寝不足になる古事記』は僕も読みました。
とても良い本なのですが、入門編としては少し難しく感じるかもしれませんね。
僕のオススメは(いくつもありますが…)『古事記まんが』という本ですね。
まんがなのでとてもわかりやすいですし、それでいて本質を外していません。
古事記の魅力についてはまたご一緒したときにでも。
遅くにすみませんでした。
氷川」
外を見ると新幹線は多摩川をあっという間に渡った。
「もう神奈川県に入ったのか」
外は暗かったが、雨が降りだしたようだった。
------------------------------------
22時30分
「ん?ヨウ!
ねぇ、ヨウ!!」
聖に体を揺すられ、陽は目を覚ました。
「ん?どうした聖ぃ…」
「今、ヨウのスマホがブルブルしてたよ。
氷川さんじゃない?」
「聖…もしかして、それが理由でオレを起こしたの?」
陽は寝ぼけた声で言った。
「だって気になるんだもん。
それにヨウのスマホ勝手に見るわけにいかないじゃん」
「うーん…」
陽はひと伸びすると、ベッドを出てスマホに手に取った。