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【新古事記124】雨上がりの朝

6時00分


航はゴミをまとめ、通用口から外へ出た。すでに雨は上がっていた。雨に濡れた集積ボックスの蓋を開け、ゴミを放り込む。


航はホテルの正面玄関に移動した。傘立てに濡れた傘が何本も刺されている。傘を集めると、再び通用口から外に出て、傘を広げ並べていった。


フロントバックに戻ると、石松さんが起きてきていた。


「おはようございます」


石松さんに挨拶をしながらCDプレイヤーの再生ボタンを押す。少し間を置いて、ロビーにBGMが流れ出した。


雨上がりの朝にぴったりと思えるインストゥルメンタルだったが、航はBGMを止めた。そして、例のビートルズのカバー曲が収録されたCDに交換した。


ロビーに「Blackbird」が流れ出した。航はフロントに出て音の大きさを確認した。


「おっ、いいですねー。ビートルズ


石松さんがフロントに出てきた。


「音をもう少し大きくしましょう」


石松さんはフロントバックに戻り、音量を上げた。


「うん、このくらいじゃなきゃいけません」


ロビーにはかなり大きめなBlackbirdが流れた。石松さんは鼻歌交じりでご機嫌だった。


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7時45分


航は石松さんと2人でフロントに立っていた。時折、チェックアウトの対応をする程度でロビーはのんびりとした空気が流れていた。


「おはようございます」

「おはようございます」


2人の女性が出勤してきた。1人は掛川君が恋心を抱く河村ちゃん。もう一人は聖だった。聖は航を見つけると


「あっ」


と声を出した。そして続けた。


「氷川さん、ちょっといいですか」


聖は航に向かって手招きをした。


航は石松さんの顔を見た。


「空いてるから大丈夫ですよ」


「じゃ、ちょっと外しますね」


航は聖に続いてフロントバックに入った。


「ひーちゃん、おっはよー


今日もかわいいねー」


そう言ったのは朴さんだった。朴さんは椅子に座ったまま大きく伸びをした。


「パクちゃん、おはよー


…って、何1人だけサボってんのよ!」


朴さんは頭をかいて言った。


「いやー、今日は空いてるしフロントに3人も立ってたら暑苦しいでしょ。私、170以上あるから、実質男3人みたいになるよ。


それに、今日は五十嵐さん休みだから大丈夫よ」


「はい、じゃー、氷川さんと交代です。


パク選手、インッ!!」


「なになに?氷川さんと秘密の話?


気になるなー」


「ほらほら、石松さんを1人にしないで」


「はいはい、わかりましたよー。


あと10分ちょい、がんばるかーっ」


朴さんはそういうと元気よくフロントに出て行った。