「古事記に出てくるオノコロジマのことですけど…」
航が続けると鳥海さんが聞いた。
生んだオノコロジマですか?」
「はい、そうです。
アレ、僕は『自ずから転がる』からオノコロジマって名付けたんだと思うんですね」
「自ずから転がる?」
「はい、つまり…
地球は自転してるってことです」
「ああ、確かに!」
鳥海さんは強く頷いた。
「え?地球が自転してるって当たり前じゃないですか?」
江本さんの言葉を聞き、鳥海さんが笑った。
「江本君、『地球は回ってる』って言ったの誰だっけ?」
「ん?ガリレオでしたっけ?
・
・
・
ああっ!
まさかガリレオより以前に日本人が地動説を???」
「そういうことになりますね。
鳥海さんの富士山のお話もですけど、僕たちのご先祖様は…説明がつきませんが、そういうことを知っていた…というか感じていたのかもしれませんね」
「すごいですね〜〜」
吉川さんが感心して言った。
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21時40分
「ん?あ、もうこんな時間!!
氷川さん、お時間大丈夫ですか?」
吉川さんの声に航も時計を見た。
「吉川さん、ありがとうございます。
みなさん、僕はそろそろ行かないといけません」
鳥海さんが笑った。
「かぐや姫みたいですね」
江本さんが言った。
「うーん、残念。もっとお話したかったです」
航は申し訳なさそうに頭を下げた。
鳥海さんが少し心配そうに言った。
「お仕事、間に合いますか?」
「はい、大丈夫です。
新幹線に乗ってしまえば20分ですから。
みなさん、今日はありがとうございました。
本当に楽しかったです」
そして、航は一人一人と固い握手を交わした。
江本さんが言った。
「また、集まりましょうね!!」
航は頷くと一人、東京駅へ向かい駆け出した。