07時45分
「おはようございます」
聖が出勤してきた。航と陽は掛川さんと一緒に並んでフロントに立っていた。
「あの〜、氷川さん…」
「ん?なんですか?」
陽は申し訳なさそうに言った。
「この後、時間ありませんか?」
「この後って、勤務の後にですか?」
「は、はい…」
「僕は全然大丈夫ですけど」
「氷川さんは8時あがりだけど、僕は10時までなんですよねー。
失礼は承知の上なんですが、どうしても昨日の続きというか…もう少しお話したいんです。
ちょっと…次に氷川さんと勤務が重なるときまで待てないというか…」
航は少し驚いた顔をして言った。
「もちろんいいですよ。じゃあ駅前のカフェで待ち合わせましょう。
浅間さんが10時上がりだから、だいたい10時半でいいですよね?」
陽の表情が明るくなった。
「ありがとうございます。はい10時半くらいで。
氷川さん、連絡先、教えてもらってもいいですか?
掛川君、ちょっと、一瞬、外すね」
「はーい」
陽は航をフロントバックに誘った。2人はスマホを取り出すと、素早く連絡先を交換した。
その様子を聖が不思議そうに見ていた。
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08時10分
「お先に失礼します。
浅間さん、また後ほど」
航はそう言うと更衣室へ向かった。
陽は聖と並んでフロントに立った。
時折、チェックアウトの宿泊者が姿を見せる程度でロビーは閑散としていた。
「ヨウ、氷川さんと連絡先交換したの?」
聖が話しかけてきた。
「うん、昨日、色々話してさ。
話し足りないからこの後カフェで待ち合わせしたんだ」
「へー、そうなんだ。
それ、楽しそうだね。私も行きたかったなー。氷川さんとは入れ違いだし、ほとんどお話したことないし。
ヨウ、氷川さんと仲良くなれて良かったね」
聖は嬉しそうに言った。