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【新古事記076】延長戦

07時45分


「おはようございます」


聖が出勤してきた。航と陽は掛川さんと一緒に並んでフロントに立っていた。


「あの〜、氷川さん…」


「ん?なんですか?」


陽は申し訳なさそうに言った。


「この後、時間ありませんか?」


「この後って、勤務の後にですか?」


「は、はい…」


「僕は全然大丈夫ですけど」


「氷川さんは8時あがりだけど、僕は10時までなんですよねー。


失礼は承知の上なんですが、どうしても昨日の続きというか…もう少しお話したいんです。


ちょっと…次に氷川さんと勤務が重なるときまで待てないというか…」


航は少し驚いた顔をして言った。


「もちろんいいですよ。じゃあ駅前のカフェで待ち合わせましょう。

 

浅間さんが10時上がりだから、だいたい10時半でいいですよね?」


陽の表情が明るくなった。


「ありがとうございます。はい10時半くらいで。

 

氷川さん、連絡先、教えてもらってもいいですか?


掛川君、ちょっと、一瞬、外すね」


「はーい」


陽は航をフロントバックに誘った。2人はスマホを取り出すと、素早く連絡先を交換した。


その様子を聖が不思議そうに見ていた。


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08時10分


「お先に失礼します。


浅間さん、また後ほど」


航はそう言うと更衣室へ向かった。


陽は聖と並んでフロントに立った。


時折、チェックアウトの宿泊者が姿を見せる程度でロビーは閑散としていた。


「ヨウ、氷川さんと連絡先交換したの?」


聖が話しかけてきた。


「うん、昨日、色々話してさ。


話し足りないからこの後カフェで待ち合わせしたんだ」


「へー、そうなんだ。


それ、楽しそうだね。私も行きたかったなー。氷川さんとは入れ違いだし、ほとんどお話したことないし。


ヨウ、氷川さんと仲良くなれて良かったね」


聖は嬉しそうに言った。