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【新古事記064】帰路の電車

平日午後の電車は空いていた。陽と聖は並んで座席に腰かけた。


聖はさっき手に入れた雑誌をパラパラとめくっていた。


「それ、なんの雑誌?」


陽が聖に聞いた。


「占いとか、スピリチュアルとか…そっち系の雑誌だね。


普段こんなの買わないけど、『龍特集』ってのが気になったの」


「ふーん。聖、すっかり龍にハマってるね」


陽は興味なさそうに言葉を返すと、やることもないのでポケットからスマホを取り出した。


なんとなくさっき商店街で見かけた「極空ラーメン」を検索してみた。いずれ聖と行く機会があるかもしれない。


スープは醤油ベースの豚骨醤油味、麺はストレートの細麺を使っているらしい。同じ醤油とんこつの横浜ラーメンよりアッサリしているように見えた。


(聖、こういうの好きかもなー)


そんなことを思いながら画面を眺めていると、創業者の顔写真が出てきた。


(うわー、悪そうな人だなー。

 

絶対、近づきたくないタイプ…


あ、でもこういう人が更生して起業家になっちゃうパターン、多そうだな)

 

極空ラーメンは和歌山県内に20店舗ほど、少しずつ他県にも展開しているようだが、まだ都内には1店舗しかないようだった。


(へー、学歴・前科不問で採用してるんだ。


オレなんかこんなところに入ったら馴染めないだろうなー。


さっきの…そうそうノブナガさんみなたいな人なら馴染めるんだろうけど)


そんなことを思いつつ、陽は肩書きに関係なく受け入れる創業者の器の大きさを素晴らしいと思ったし、世の中にはすごい人がいると素直に感心した。


その時、聖が言った。


「ヨウ!これ見てこれ!!」