「え?浅間さん、この後、氷川さんとカフェ行くんですか?」
陽と聖の会話を聞いた掛川君が話しかけてきた。
「うん、昨日の夜、色々話してたら面白くてさ。話し足りないんだけど、毎回勤務が重なるわけじゃないから。無理言ってお願いしたんだ」
「いいなー、僕も聞きたいです。
氷川さん、僕が好きな作家さんのセミナーなんかに参加されたことあるみたいで。
そういう普通では聞けない話って為になると思うんですよねー」
陽が聞いた。
「作家さんって、昨日読んでた本の?
大富豪のなんとかって言う…」
「はい。『幸せに生きる!大富豪の導き』です」
聖が掛川君に話しかけた。
「はい、そうです。
でも、高いんですよ、セミナー。1日で何万円もするんです」
「げ?そんなに高いんだ」
聖はびっくりした。
「はい。僕も頑張れば行けなくはないですけど…。
実は読者プレゼントで無料招待を募集していて。さっき申し込んだんですよー。
当たらないかなー」
「そっか。掛川君、当たるといいね」
聖がそう言う横で、陽は思った。
(これは、氷川さんの言った通りの展開になってきたな…)
------------------------------------
08時50分
仕事を終えた航は一度帰宅していた。シャワーを浴び、さっぱりするとテーブルの上にスマホと手帳を置き、スケジュールの確認をした。
19:00〜東京駅、江本さん
今日は19時にビジネス交流会で知り合った江本さんに会う予定になっていた。交流会に誘ってくれた吉川さんも顔を出したい、と言っていた。
陽から急な誘いを受けるのはもちろん予定外の出来事だった。航はザッと頭の中で1日のスケジュールをイメージした。今日も夜勤がある。
そして呟いた。
「ま、なんとかなるだろう…」