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【新古事記066】33歳の憂鬱

22時45分

 

「おはようございます。今日もよろしくお願いします」

 

フロントバックに航が入ってきた。

 

航は掛川さんの姿を見つけると、バッグから本を取り出し渡した。

 

「これ、アドラー心理学の本です。もしかして買っちゃいました?」

 

「ああ、いえ、まだ買ってないです」

 

「もし良かったらあげますよ。もう僕は何回も読んだし」

 

「え、いいんですか!?ありがとうございます」

 

2人のやり取りを見ていた陽は少し複雑な気持ちになった。

 

掛川君、本読んだりするんだ???

 

しかも心理学って???)

 

日付を超えるとロビーには誰の姿もなくなり、静かになった。航がロビーの照明を落とした。

 

「よし、今日はもう大丈夫だね。

 

掛川君、先に仮眠入っちゃって。4時戻りでいいよ」

 

「え?そんなにいいんですか?」

 

「休める時に休まないと身体もたないじゃん」

 

「ありがとうございます。じゃ、お先に休ませていただきまーす」

 

掛川さんが仮眠に入り、フロントバックには陽と航の2人になった。

 

作業を進めながら陽は航に話しかけた。

 

「氷川さん、さっき掛川君に本を渡してましたよね?」

 

航は手を止めずに答えた。

 

「はい、アドラー心理学っていう…何年か前に大ヒットした本ですよ」

 

「心理学?心理学って人の心読めちゃうみたいな???コントロールしちゃうとか?

 

あいつ、まさか河村ちゃんを洗脳しようとかしてませんよね?」

 

航は笑いながら言った。

 

「片思いの彼女を洗脳ですか?

 

浅間さんは想像力豊かですね」

 

「あ、掛川君が河村ちゃんのこと好きなのご存知なんですね?」

 

航は続けた。

 

「この間、掛川さんと勤務が一緒だった時、自己啓発本を読むと聞きまして…」

 

自己啓発?ちょっと洗脳っぽいイメージありますね」

 

「浅間さんは警戒心強いですね。

 

まあ彼なりに、若いうちに自己研鑽しておきたいらしいですよ」

 

「じ、自己研鑽?随分難しい言葉を使いますね」

 

掛川さんが言ってたんですよ。自己研鑽って」

 

陽は少し憂鬱な気持ちになっていた。