07時15分
「浅間さん、戻ってきませんね。
今までこんなこと一度もなかったのに」
掛川さんは不思議そうに言った。仮眠に入った陽は、時間になっても戻らなかった。
「ちょっと僕、見てきます」
航はそう言って掛川さんの了承を得ると、その場を外れた。
----------------------------------------
コンコンコン…
どこか遠くから音が聞こえてくるような気がした。
コンコンコン…
「はっ!!」
2回目の音で、陽は飛び起きた。昨日、掛川君に借りた本を読んでいるうちに、いつのまにか眠ってしまったらしい。心臓がバクバクと音を立てている。
陽はスマホの画面を見て時間を確かめた。
(やばっ、寝過ごした)
「浅間さーん」
ドアの向こうから航の声が聞こえてきた。
「あ。すみません。寝過ごしました。
すぐ行きます!!」
航の声が返ってくる。
「わかりました」
陽は急いで顔を洗い歯を磨く。着替えをし準備を整えるとすぐにフロントバックに向かった。
ガチャッ!!
「掛川君、ごめんごめん」
「浅間さん、おはようございます。
浅間さんが寝過ごすなんて初めてですね。体調は大丈夫ですか?」
「大丈夫、大丈夫。スマホの目覚ましセットするの忘れてたよ。本当に申し訳ない」
掛川君は笑って言った。
「大丈夫ですよ。
今日は氷川さんもいますしね。3人体制って楽ですよねー。ずっとこのままならいいのに。
それに…浅間さんにもそういうことあるんだって、逆にホッとしました」
続いて陽は航にも謝った。
「氷川さん、ご迷惑をおかけしてしまい申し訳ありません」
「いえいえ、ご迷惑だなんて…それに、僕は研修中ですから」
掛川さんが割って入った。
「浅間さん、気にすることないですよ。
それに、朴さんなんてしょっちゅう寝過ごしてますから。あの人、本当に朝弱いからなー。
この間なんて8時あがりなのに誰も気づかず、11時まで寝てたんですから。
3時間の寝坊残業」
掛川さんが面白おかしくそう言うと、陽は苦笑いをした。
それを聞いた航は思った。
(浅間さんは、みんなに好かれているな)