仮眠に入った陽は横になっても眠ることが出来なかった。
「オレの幸せって…なんなんだろう…」
陽は航に言われた言葉を思い出していた。
「やっぱりアレだよな…
聖と結婚したいし、聖を幸せにしたいよな。
そのためには、、、
やっぱりネックは給料だよなぁー
三木部長との面談も流れちゃったし…
転職するにしても、もう33歳だもんなー
オレ、なんの資格もないし。どこも取ってくれないだろうなー。
でも、なんの資格取ればいいんだろ???」
陽の思考はグルグルとループし、目が冴えてとても眠れそうになかった。
「…そうだ」
陽はバッグから掛川君に借りた本を取り出した。そして、パラパラとメージをめくり読み始めた。考えるのをやめて読書でもしていればすぐに眠気が襲ってくるだろう。
----------------------------------------
04時45分
「おはようございます」
仮眠から戻った航は掛川さんに声をかけた。掛川さんは本を読んでいた。
「おはようございます。
アドラーの本、ありがとうございました。とても面白くて一気に読み終えてしまいました」
「え!もう読み終えたんですか!?
喜んでもらえたら嬉しいです」
「さっき浅間さんに貸してほしいと言われ…
貸しちゃったんですけど、大丈夫ですか?」
「ええ、もちろん。掛川さんに差し上げたものですから。
ん?その本はなんですか?」
「これですか?
『幸せに生きる!大富豪の導き』って本ですけど。この方、ベストセラーを何冊も出してるんですよ」
掛川さんは航に本を差し出してきた。
「ああ、有名ですよね。僕もこの方の本、何冊も読みましたよ。
セミナーに行ったこともあります」
それを聞いた掛川さんの目が輝いた。
「え?セミナーに行ったことがあるんですか?
値段、高くないですか?
そもそもこの方、日本にいるんですかね???」
「さぁ、どうでしょうね???
僕がセミナーに行った時はボストンに住んでいらして…ちょうど帰国するタイミングでセミナーがあったんですよ。それで参加しました。
ホームページを見てみたらどうですか?」
航がそう言いながら、パラパラとページをめくると、本の隙間から小さなチラシが飛び出し床に落ちた。
掛川さんはそれを拾い上げた。
「ん?」
そこには
「幸せに生きる!大富豪の導きセミナー〜読者限定100名ご招待〜」
と書かれていた。
掛川さんは興奮気味に言った。
「この人のセミナーって、1日で数万円するんですよね?それを招待してくれるなんて!!
でも100名か…当たったら嬉しいんだけどなー」
掛川さんは早速チラシに印刷されたQRコードをスマホで読み取り、応募ページにアクセスして手続きした。航はその行動の早さに感心した。
「当たるかわからないけど、休みの申請出した方がいいかなー」
航は笑いをこらえながら言った。
「掛川さん、大丈夫。きっと当たると思いますよ」