聖は開いた雑誌のページを陽に向けてきた。
「ここ!ここ!」
陽は雑誌を覗き込んだ。
「あれ?この人???さっきの…」
『スピリチュアルに555万円を投じた男!
シキカワ☆ワンダラーの突撃スピリチュアル』というコラムに見たことのある人物の写真が載っていた。
いや、顔ははっきりと写っていなかったが、明らかに見たことのある人物だった。
「この人…」
陽は聖の顔を見ながらもう一度口を開いた。
「だよね、さっきのカフェのオーナーのお兄さんだよ」
そのコラムではカフェのオーナーである「ARAKI」という人物がシキカワ☆ワンダラーに絶賛されていた。
「このシキカワさんって、スピリチュアル界では有名らしくて、歯に絹着せぬ物言いでスピリチュアリストを批評してるらしいよ。
スピリチュアル界のご意見番なんだって。
厳しい意見も多いんだけど、スピリチュアル界の危うさを経験してるからこそ、被害者を出したくないという志を持って活動してるんだって」
陽は雑誌のコラムを見ながら不思議に思った。
「でも…」
「ん?」
「この雑誌にカフェの連絡先も書いてないし、その…ARAKIさんには何の旨味もなくない?」
「たしかに。でもあのお兄さん、あんな感じだし、集客しようなんて全然思ってないんじゃない?
シキカワさんのガチの潜入取材なのかもね。
それに…」
聖はさらに続けた。
「今はSNSの時代だからね。
たとえカフェの名前が載っていなくても、情報は拡散されて、あっという間にカフェも特定されちゃうと思うよ。
そうしたら、あのお兄さんも儲かるし、結果的にはいいのかもね」
陽は聖に聞いた。
「この雑誌っていつ発売なの?」
「ん?今日みたいだね」
「ふーん、じゃあ…
これを見たスピリチュアル好きな人たちが、今頃カフェに殺到してるかもしれないね」
「確かに。私たち、ラッキーだったかもね」
新宿ー、新宿ー
電車内に駅到着のアナウンスが流れた。陽と聖は乗り換えのため、電車を降りた。