話がひと段落すると広末さんが言った。
「ところで君たち、お腹は減ってないの?」
するとノブナガが即答した。
「腹ペコです」
広末さんは笑った。
「ノブナガ君のそういう素直なところ、好きだよ。みんな、好きなもの頼んでいいよ…
と言っても、頼みづらいか。お兄さん、注文お願いします」
広末さんはオーナーを呼び、適当にフードを頼んだ。そして最後に付け加えた。
「みんな、同じものをお代わりで。いいよね?」
すぐに聖が言った。
「広末さん、そういうわけには…」
広末さんはすぐに聖の言葉を遮った。
「いいからいいから。
このくらいはさせてくれ。僕だって、散々上の人にお世話になってきたんだから」
「あ、ありがとうございます」
陽と聖は申し訳なさそうに言った。
「ありがとうございます!!」
ノブナガは思いっきり遠慮なく言った。
「お兄ちゃん…40歳にもなって恥ずかしくないの?」
ノブナガは怪訝な顔をした。
「恥ずかしいものかっ!
広末さんはオレを漢と見込んでくれたわけだ。恥ずかしさなど微塵もない。
オレはこの恩を忘れん!!必ずや恩返しをするぞ!!朱亥のようにな!!」
「シュガイ?誰それ?」
「カナコ…ホントにお前は何も知らないんだな。
広末さん、楽しみにしていてください。
カーッカッカッカッカッ!!」
広末さんは楽しそうに言った。
「うん、楽しみにしているよ。
それから朱亥はマニアック過ぎるよ」
ガタッ
ノブナガは席を立ち、言った。
「拙者、ちょいと厠へ行ってまいる」
そしてオーナーに声をかけた。
「トイレどこぉー?」
「トイレは店の外だよ」
ノブナガがなんとなくレジ横の電話を見ると、電話線が抜かれていた。
「おい、これ電話線抜けてるぞ?」
「ああ、それか。
いいんだよ。朝からひっきりなしに電話が鳴ってね」
「ん?そんなに流行っているようには見えぬが?」
店内にはノブナガのグループ以外、客の姿はなかった。