「そういう場合はね、紙に「空」とか「雲」って書いて神棚の上…天井に貼ればいいの」
カナコが言った。
「カナコっ!!?
きさま、オレの手柄を横取りしやがったな!!」
「お兄ちゃんがいつまでと独り言言ってるからじゃ〜〜、ベロベロベー」
カナコはあかんべーをしてノブナガを挑発した。
「ぐっ!!
このにんちくりんめっ!!!!」
聖は言った。
「へーーー、そんなやり方があるんだ?
なんかかわいいな、その発想。
ありがとう、かなぶん。
それにしても、ノブナガさんとかなぶん、本当に仲良しよねー」
聖が笑うと巫女さんが言った。
「かなぶんさんの言う通りです。
神棚の上に「空」や「雲」と書かれた紙をはることで「この上には空や雲しかありません」と神様に宣言するのです」
「え?そんなのありですか?」
陽が少し驚いて言うと巫女さんは頷いて笑った。
「日本人は、元来ポジティブですから」
「よかったーーー
ホッとしました」
聖がホッとした様子を見せると、巫女さんは付け加えて言った。
「この作法は昔からあったわけではありません。
聖さん宅のように、今はマンション住まいが当たり前の時代になりました。
住環境が変わる中「これは神様に失礼ではないだろうか?」と感じた人々がどうすれば神様への敬意が損なわれないかを考え、自然発生的に生まれてきた作法なのです」
「へーーー、
人と神様の関係性…
なんだか素敵ですね」
聖は言った。
「はい。
人間は…時代に合わせて神様との付き合い方を柔軟に変化させてきたのです。
伝統を重んじつつ、より良い形に変えていく。
これぞ日本人の真骨頂と言えるのではないでしょうか?
だから聖さんも…まずお友達からはじめてみてください」
巫女さんは笑った。