「一杯のお水をお供えするだけでも構わないんです。
最初から難しくすると続かないですからね。
簡単に、簡単にです」
聖は言った。
「わかりました。
いきなり結婚しようとせずに、まずはお友達からはじめてみます」
「ふふふ。
そうそう、そんな感じです」
巫女さんは笑った。
「ふと思い出したんですけど…」
陽が口を開いた。
「昔、テレビで古い家の映像を見たことがあるんです。本当に偶然目にしただけで、なんの番組かもわからないんですが…
その家は二階建てで、玄関に神棚があるんです。神棚の前で職人風の男性…多分、その家のご主人だと思うんですが…
彼が手を合わせているんです。
で、神棚の上が…えっと、なんていうか…
吹き抜けになっていたんですよ。
その時、「神様に合わせた家の作りになっている」みたいなナレーションが流れたんです」
巫女さんは嬉しそうな顔をした。
「それは「神様の住まいである神棚の上で人が生活するのは失礼なのでは?」という考え方によるものです。
神棚の上を吹き抜けにすることで、神様に敬意を払っているんですね。
まさに神様に合わせた家屋ですね」
聖が焦ったように言った。
「えっ、どうしよう…
うち3階建マンションの2階なんです。
神棚をお祀りした場合、神様の上で人が生活していることになりませんか?」
「カーッカッカッカッカッ!!」
ノブナガが高らかに笑った。
「その問題はこのオレが解決しよう!!」
「お兄ちゃん…あまりにセリフがなかったから耐えられなくなったのね。
喋らないと生きていられないのね…
泳がないと死んじゃうマグロみたい…」
「うるさいんじゃ!!
カナコ、おまえに言われとうないわっ!!
おまえの方がおしゃべりじゃろ?
おまえはピッコロ大魔王のように口から生まれたに違いない。しかも卵で。
カーッカッカッカッカッカ!!」