「ああ、あのシーンですね」
聖はポンと手を叩くと陽の背後に回り、背伸びして陽のリュックを開けた。
「おい、聖〜。なにやってんだよ〜〜」
「あったあった」
聖は陽のリュックから「古事記まんが」を取り出した。そして、ページをめくって言った。
「あったあった。
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ほんとだ!クラオカミ、雨を呼ぶ龍神だって!!」
それを見たノブナガとカナコが驚いた顔をした。
「ん?かなぶん、どうかした?」
聖が聞くとノブナガが喋り出そうとした。
「その本は…
んぐ、んぐぐぐっ!!」
カナコが背伸びをしながら必死にノブナガの口を抑えた。
「お兄ちゃんが喋り出すと話が進まなくなるから。
お願いだから黙ってて」
二人の様子を見た巫女さんが微笑みながら言った。
「クラオカミの名前を覚えていないのは無理もありません。
出てくるのは名前だけで、目立った活躍をするわけではありませんから。
古事記はそういう神様がとても多いんですよ」
聖が言った。
「でも、何で火の神様を斬り殺すと龍神様が生まれるのかしら?」
陽が言った。
「そう言えば…
氷川さんが言ってたんだ。
イザナミの死から火の神を斬り殺すまで…
これを火山噴火による地殻変動として捉えるとつじつまが合う…って」
カナコが言った。
「なるほど。
イザナミが母なる大地だとしたら…
火山噴火がおこり、大地が隆起し…
ゲロが鉱山になり、おしっこが小川になり…
納得ね」
巫女さんが言った。
「素晴らしい捉え方だと思います。
火山が噴火し、大量の水蒸気が上がり…
雲になりやがて雨となり地上に降り注ぐ。
渓谷になり、滝になり…
古代の人は、それをクラオカミ、タカオカミという龍神として祀ったのかもしれませんね」