17時30分
航は東神奈川駅にいた。
「今日はよろしくお願いします。お会い出来るのが楽しみです。何かありましたらご連絡ください」
スマホで江本さんにメッセージを送り、続けて吉川さんにもメッセージを送った。
ホームに水色のラインが引かれた電車が入ってきた。車内は込み合っていたが、ぎゅうぎゅうというほどではない。
やがて電車は多摩川の陸橋を渡る。綺麗な夕焼けが富士山のシルエットをくっきりと映し出しているのが見えた。
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18時10分
航は東京駅に着いた。江本さんとの待ち合わせ時間までまだゆとりがある。少し早すぎたかもしれないが慌てるよりよほど良い。
吉川さんからメッセージが来ていた。
「時間通りに向かいます」
昔は人見知りだった航だが、そんなものはとっくに卒業していた。いい大人が人見知りだなんて言ってられない。
誰かに会うのに自分一人だからと言って特に気にすることもない。それでも良き理解者の吉川さんが同席してくれるのは嬉しかった。
航は駅構内にある本屋に入った。航は本屋が好きだった。特に目当ての本はなかったが、本屋の中をぐるぐると散策し、インターネットでは味わえない空気を楽しんだ。
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18時20分
「いただきまーす」
「いただきまーす」
陽と聖は夕食を食べ始めた。
すぐに聖が切り出した。
「で、ヨウ。
氷川さんとどんな話をしたの?古事記って???」
モグモグモグモグ…
陽は口の中の食べ物を飲み込むと言った。
「聖、そう慌てるなって」
「だって気になるもん!」
陽は聖に昼間のことを話し始めた。