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【新古事記086 】トラウマ

「求人誌を見て…なんだか懐かしい気持ちになって…少し前向きになれた気がしました。


五十嵐さんに直接連絡をしました。五十嵐さんはすぐに電話に出てくれて。


会社を辞めた旨を伝えると、すぐにメシでも食べに行こうと言ってくれて。


経緯を伝えたら『次が決まるまでウチで働けば?こっちも助かるし』と言ってくれて。そして、アルバイトを再開したんです。


最初のうちは都落ちみたいで嫌でしたけど、みんな変わらず受け入れてくれて。


働いているうちに気持ちも上向きになりました。『働く』って大切ですね。


で、やがて社員になって、そのままズルズルと10年が経過してしまいました。


すみません、一方的に話してしまって」


陽はそこまで言うと話すのをやめた。少し間を置いて航が切り出した。


「つまり…


ズルズルと過ごしてしまった10年に後悔があり、その…事件がなければ人生変わっていたかもしれないということですか?」


陽は間髪入れずに言った。


「昨夜、仮眠前に掛川君からアドラーの本を借りました。


途中で寝落ちしちゃったので、まだ少ししか読んでいないですけど『アドラーはトラウマを否定』しているらしいですね。


僕はあの事件であんなに好きだったサッカーが嫌いになった時期がありました。今でも日本のサッカーを見ないのはその影響だと思います。昔は好きでしたから、日本のサッカーも。


サッカーの仕事に携わるなんてやめておけばよかったと思っています」


陽はハッとなり、少し恥ずかしい気持ちで言った。


「いや、なんだかすみません。


僕、こんなことないんですけど。急に堰を切ったように話が止まらなくなってしまって…」


航は首を横に振った。


「たしかに、好きなことが嫌いになってしまう…それは悲しいことかも知れませんね。


それに『話すは放す』ですから。そうやって吐き出すのは大切だと思いますよ。


ついでに言うとアドラーはトラウマの存在は認めているんですよ」


「え?そうなんですか?」


「ま、その話は置いておいて…

 

これからの話をしましょうか」