お参りを終えた2人は、境内を見てまわった。
「この狛犬、聖にそっくりじゃない?」
おー、よしよし」
陽はそう言って狛犬の頭を撫でた。
「ヨウ、、、ぶつよ…」
聖は白い目で陽を見た。陽はさらに狛犬を観察してから言った。
「あ、ごめん、聖。
こいつ、付いてるわ
オスだったわ」
「・・・・・」
聖はさらに冷たい視線を陽に送った。
「ごめん、ごめん」
そして2人は笑った。境内には誰もいなかった。
「ヨウ、ちょっとお守りでも見よ」
そういうと聖は陽の手を引っ張り、参集院と書かれた建物へ向かった。
聖は並べられたお札やお守りを見て言った。
「色々あるわねー」
2人の姿に気づいた若い巫女さんが、建物の奥から窓口に出てきた。20代前半だろうか。
「あのー」
(聖って、誰にでも臆せず話しかけるよなー)
聖は巫女さんに声をかけた。陽は密かに聖のこういう社交的なところを見習いたいと思っていた。
「この『四魂守り』ってなんですか?4種類あるんですね???」
若い巫女さんはすぐに教えてくれた。
「ようこそお参りくださいました。これはですね…
人は4つの魂を持っている、という考えが日本にはあるんです。その4つ魂をコントロールしながら私たちは生きているんですよ。
あ、私たちと言いましたが、神様も同じです。神様にも四魂があります」
「へー」
聖は感心していた。若い巫女さんは続けた。
「頭にあるのが奇魂(くしみたま)、胸に幸魂(さきみたま)、背中に荒魂(あらみたま)、そしておヘソの下あたり、丹田にあるのが和魂(にぎみたま)です。
奇魂は直感力や霊感、幸魂は幸せ、荒魂は勇気や行動力、和魂は優しさや調和をつかさどっています」
「へーーー、お姉さん、若いのにお詳しいんですね!」
(そりゃそうだろ?巫女さんだもん)
陽はそう思いつつ、黙っていた。
「あ、そうだ!
あの随身門にいるお侍さんかな?あのお二人は何をしているんですか?」
巫女さんは快く答えてくれた。
「あの神像は、向かって右が豊磐間戸命(とよいわまどのみこと)、左が奇磐間戸命(くしいわまどのみこと)です。
神々が天の岩戸からアマテラスを呼び戻した後、岩戸を守護した二柱です」