不思議な2人組みと別れた陽と聖は、龍橋神社の境内を見てまわった。
龍の神社らしく、境内には清流が流れていた。都内とは思えない清々しい神社だった。こんこんと湧き出る御手水は、地下50メートルから汲み上げているらしい。
御手水の作法を知らない陽は、聖の動きを見ながら真似をした。
「こんなんで神様に怒られないかな?」
「大丈夫よ。神様はそんな小さいことでは怒らないもん、きっと」
御手水舎のすぐ近くに朱色の門があった。
「これが隋神門かな?」
門の両側には武士のような人形が安置されていた。そこには何の説明もなく、陽はもちろん、聖も何のために存在しているのかわからなかった。
「うーん、神社を守ってるのかなー」
聖は首を傾げながらそう言った。
そして、隋神門の中へと歩を進める。天井を見あげると、カナコという女性が言っていた通り、そこには大きな鈴が吊り下げられていた。
「これね、よーし!」
聖は目を瞑り、両手を胸の前で合わせた。そしてフーと息を吐くと…
パン!
と手を打った。その音が隋神門の中で気持ちよく共鳴した。
「よーし、いい感じ🎶」
聖は満足そうに言った。
「次はヨウの番だよ」
「オ、オレはいいよ。やめとく」
陽はなんとなく失敗した時のことを考え、手を叩くのを躊躇した。
「ふーん。まぁ無理にとは言わないけど」
「…知ってるよ。聖のそういう所、いいよな。無理強いしないとこ
で、聖の夢ってなんだっけ?」
聖はハッとなって言った。
「あ、そっか。音が響くと夢が叶うんだったね。
上手に鳴らすことに集中してて夢を伝えるの忘れてたよ」
「な、なんだよそれ…」
「まぁ、良いではないか」
「聖って能天気だよな〜」
そのまま二人は拝殿に進んだ。
「私の動きに合わせてね」
聖は500円玉を賽銭箱に放り込んだ。
それを見た陽は思った。
(ご、500円!?もったいな〜)
聖は鈴紐を揺らし、鈴を鳴らした。涼やかな音が心地よい。聖は目を閉じた。陽は目を開けたまま聖の動きを追った。
聖に合わせ二礼をし…
パン
パンッ!!
二人の柏手は寸分の狂いもなく重なり合った。