10時55分
「おはようございまーす」
出勤した陽は、フロントバックのロッカーに置かれた聖のバッグを見つけた。そして、自分のバッグから「古事記まんが」を取り出し、聖のバッグに忍ばせた。
その後、聖と一緒に勤務にあたっていたが、これまでも勤務中に二人でプライベートな話をすることはほとんどしなかったし、それは今日も同じだった。
陽はそれが周囲への配慮だと思っていたし、きっと聖もそうだろう。
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15時10分
「あー、まだ5時間もあるのかー。
先は長いなぁ…」
陽は一人で休憩室にいた。近所のローソンでカップタイプのカフェオレを買ってきて飲んでいた。
「ちりつもなんだけどなぁ…」
給料が少ないと思いながら、ついついコンビニなどで余計なものに手を伸ばしてしまう。節約しなければと思いつつ、陽はなかなか出来ないでいた。
陽はカフェオレを飲みながら、スマホを操作した。
「あれ?聖からメッセージきてる…
なになに?」
陽は聖のメッセージを読み始めた。
「ヨウ、古事記まんが持ってきてくれてありがとう。今、お昼休憩で読んでるとこ。
それから一つ相談あります。
さっき、かなぶんからメッセージがきました。明日、ご飯でも食べない?って。急すぎるけど、なんかかなぶんらしいよね?
でも、明日は奇遇にもヨウも私も休みだし、どうかな?
私、かなぶんに会いたいです。
また夜に相談させてね」
読み終えると陽はスマホをテーブルに置いた。
「うーん…」
正直なところ、陽は乗り気にはなれなかった。せっかくの休みだし、二人でのんびりしたかったし、結婚の話も相談したかった。氏神神社の春日神社にも二人で行ってみたかった。
陽は再びスマホを手に取ると聖にメッセージを送った。
「もちろん、オーケーだよ。
また夜に相談しよう」