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【新古事記045】スサノオ・ファイアー・ボール

「そうそう」


カナコと呼ばれる女性は思い出したように話を続けた。


「この龍の鳥居…双龍鳥居って言うんですけど、都内に3つしかないんですよ。


あとね…」


彼女はとめどなく話し続けた。


「この先の隋神門の天井に大きな鈴があるんですけど…その下で夢を念じながら手を叩くんです。その柏手の音が響いたら夢が叶うと言われています」


聖は感心して言った。


「へーーー、ありがとうございます。


あ、私たち、この本を読んでここに来たんですよ」


聖はバッグから本を取り出し、それを女性に見せた。


陽は「私たち」という言葉に(オレは違うぞ。オレは聖に付き合ってんじゃん)と思ったが黙っていた。聖はそんな陽の気持ちをよそに話を続けた


「この本の中にこの神社が紹介されていて。


ここに来れば龍に会えるような気がして」


小柄な女性は本を眺めながら言った。


「ふーん、スピリチュアルですか?


私はそういうの興味ないけど…


この神社、龍橋神社って言うんですけど…「ハシ」という音は「繋ぐ」という意味があるそうなんです。


だから…もしかしたら、龍と繋がれるかもしれませんね」


女性は聖に向かって微笑んだ。


「ところで…」


聖は言った。


「お二人のTシャツに描かれているSFBってなんですか?」


これまで黙っていた大男がずいと前に出た。陽は一瞬身構えた。

 

大男は自信ありげに答えた。


スサノオ・ファイアー・ボール。


オレたちのバンドさ。


おい、カナコ!!もうこんな時間だぞ!!


せっかく広末さんが京都から来てくれるのに遅刻はまずいぞ」


「あ、ほんとだ!!ダッシュしなきゃ!!


それじゃ、さよなら」


そういうと、二人は陽と聖の前からあっという間に姿を消した。


「なんだか不思議な二人ね、恋人同士なのかしら?」


「バンド内の恋愛はご法度なんじゃない?」


聖のつぶやきに陽は思いつきで返事をした。