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【新古事記053】龍の計らい

「あらー、あなたたち!!」


席を立ち上がったらカナコの視線の先には、龍橋神社で会った2人の姿があった。


(げ、またあいつらか…女の子の方はともかく、あの大男がなぁ…)


陽は店を出たくなった。


広末さんが言った。


「知り合い?」


「ええ、さっき龍橋神社でお会いしたんです。ねね、こっち座ってください。ご一緒しましょう」


カナコは言うが早いかすぐにテーブルを動かしレイアウトを変え、2人の座席を用意した。


「いいんですかー、じゃ遠慮なく。


ヨウもほらほら、座って」


陽はしぶしぶテーブルに向かった。


「お二人さん、ご注文は?」


オーナーが聞いてきた。陽はメニューを見ずに答えた。


「あ、生ビールを2つお願いします」


2人が席に着くと自己紹介が始まった。


「私はカナコ。こちらが京都の広末さん。とても素敵な人よ」


「へー、京都!!」


カナコは続けた。


で、こっちの汚らしいのがお兄ちゃん」


「え?」


「おおお、お兄ちゃん!!?


お二人は兄妹だったんですね!!!


いやー、もしかしたら恋人同士かなー、なんて」


大男が聖の言葉に反応した。


「オレがこんなちんちくりんと付き合うわけなかろう!!


オレはこうもっとなんというか…


そう、あなたのような…」


大男は流し目で聖を見つめて言った。


バシッ!!


「ぶっ」


カナコの右ストレートが大男の左頬を捉えた。


「おい!カナコ、今のは痛かったぞ!!」


広末さんが言った。


「僕、下の名前『龍二』って言うんだよ。辰年生まれだからね。龍橋神社が繋いでくれたのかも知れないね」


「広末さん、よろしくお願いします」

「よ、よ、よろしくお願いします」


聖は嬉しそうに言った。陽は伏し目がちに言った。


トントン


「ヨウ…」


聖は肘で陽の脇腹をつついた。陽は仕方ないという顔で口を開いた。


「ぼ、僕は浅間陽です。隣にいるのが聖…」


カナコが言った。


「ヒナタくん?さっきヨウって呼んでなかった?」


「太陽の陽でヒナタなんです。だから、仲の良い友達はみんなヨウって呼んでるんですよ。もちろん私も」


「へー。であなたが聖ちゃんね。いいお名前」


「そうですかー。


うーん、嫌いじゃないけど…


なんていうか、西洋っぽいというか。私、顔薄いし、まるっきり日本人な顔だからなー」


「そんなことはないよ」

 

広末さんが言った。