仮眠に入った航は、バッグからタクヤさんの書籍を取り出した。
そして、まじまじと帯を見た。
帯には
「炎上上等!スピリチュアル界のご意見番シキカワ☆ワンダラー絶賛!!」
と書かれていた。
航はスマホで「シキカワ☆ワンダラー」と検索した。
すると、原色を基調とした鮮やかなホームページが画面に映し出された。
『スピリチュアルに555万円を投じた男!
シキカワ☆ワンダラーの突撃スピリチュアル』
そこにはシキカワ☆ワンダラーが体験したスピリチュアルカウンセリングやワークショップ、セッションのレビューが赤裸々に書かれていた。
「やっぱり…」
航は画面に現れたシキカワ☆ワンダラーと名乗る男性に見覚えがあった。
「式川くん、懐かしい。ぜんぜん変わらないな」
航には人生に迷走している時期があった。
12年ほど前、航は当時付き合っていた彼女…現在の妻との将来を考えた時「このままではいけない」と感じていた。収入面も不安だったし、もっと自分らしい人生があるのではないか?と思った。そしていわゆる「自分探し」を始めたのだ。
航は読書から始まり、やがて高額な自己啓発セミナーに通うようになった。その過程で知り合ったのが、先日出版を果たしたタクヤさんと式川君だった。やがてエスカレートした彼らは一時期スピリチュアルに傾倒し、いわゆる霊能者にアドバイスをもらいにいったりしていた。
特に式川君の行動力はすさまじく、インドやフィリピンの聖地を訪れるほどの力の入れようだった。
「式川くんに最後に会ったのは…3年前か?確か場所は渋谷だったな」
3年前、スピリチュアルの世界から離れた式川くんは、誰もが知る大手企業に就職した。その時、航と式川君は「お祝い」と称して二人で焼肉を食べたのだ。
大手企業でしっかり働いていると思っていたが、いつのまにかスピリチュアルの世界に戻っていたようだ。
航は少し悩んだのち、ホームページに記載されているメールアドレスにメッセージを打ち始めた。