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【新古事記028】子供の話

しばらくすると、陽はスマホの画面を暗くした。サッカーの試合が終わったのだろうか?


そして、航に話しかけた。


「氷川さん、お子さんいらっしゃるんでしたよね?」


「はい。小1の娘がいます」


「かわいいでしょう?」


「はぁ、まぁ、そりゃ…かわいいですよ」


陽は少し間を置いてから言った。


「僕の同棲してる彼女…わかりますか?」


航は少し記憶を辿った。


(確か朴さんと仲よさそうに話している女性たったな。姿勢のスッとした…)


「わかりますよ。一緒に仕事をしたことはありませんけど。朝の引き継ぎで挨拶する程度なので。明るくて素敵な方ですね」


陽の顔がパッと明るくなった。


「そうなんですよ、めっちゃいいヤツなんです」


それを聞いた航は吹き出しそうになったが、なんとかこらえた。


「聖、もうじき30歳になるんです。あ、聖って彼女の名前なんですけどね。


僕たち、結婚もまだなんですけど…


やっぱり赤ちゃん産むなら早い方がいいですかね?


その…30歳って、ちょっと気になるというか…」


航は答えた。


「うちの妻は34歳で出産しましたが、産休中もあちこち出歩いて楽しんでいたし、安産でしたよ。


まあ人にもよるとは思いますが…


今の30歳なんて若い若い。全然気にすることじゃないと思いますよ」


それを聞いて陽は安堵した。結婚をもうしばらく先に伸ばしてもいいかな、という気持ちになった。


気が楽になった陽は続けた。


「僕、子供好きなんですよねー。


だから、はやく子供欲しいんです。


まぁ結婚もしてないクセになんですけど…」


航は少し迷いながら口を開いた。


「実は、僕は…子供が欲しくなかったんです」


「え?」


陽は驚いた様子で航の次の言葉を待った。