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【新古事記023】龍の人

13時00分


昼食を終えた陽は、暇つぶしにテレビゲームをはじめた。いつものサッカーゲーム


ザーッ

カチャカチャ

キュッ


聖は食器を洗っていた。


先日、引退したサッカー選手がテレビの中では元気に動き回っていた。


「みんな歳を取るんだよな…」


そんな当たり前のことを陽は思った。自分が33歳だなんて…信じられない。そして、聖がもうじき30歳になるなんて。特に聖の30歳というラインは、陽にとって何とも言えない重いものだった。


そして今日もどうしていいかわからず、時間だけ流れていく。


13時50分


「おっ、もうこんな時間か」


陽はテレビゲームのスイッチを切った。聖の方を見ると、聖はスマホを眺めていた。


「聖、何見てんの?」


聖は目を挙げて陽に言った。


「ブログだよ。龍が見える人のブログ。人には必ず一柱(ひとはしら)の龍が付いてるんだって」


陽は怪訝そうな顔をした。


「龍?龍ってドラゴンの龍?一柱?なにそれ?」


陽はそう言いながら、聖に顔を近づけてスマホの画面を見つめた。


「何この金髪の人?めっちゃ怪しい。龍?スピリチュアルってやつ?」


「でも、すごく面白いこと書く人なんだよ。今度、本も出版するんだって。全国で講演会もあるんだって。あ、今日、名古屋であるみたい」


「ふ〜ん。頼むから変なのにハマらないでくれよ。ま、聖は大丈夫だけど」


「心配しないで〜」


聖はクスクスと笑った。


「じゃ、オレそろそろ行くわ。今日は15時からだよ」


「うん、気をつけてね。あれ?そろそろ朴ちゃん、戻って来る頃じゃない?」


「うん、確か今日から復帰だと思うよ」


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陽は自転車を漕ぎながら駅に向かった。


(スピリチュアルか…。自分にそんな能力があったら楽だろうな。先のことで悩んだりしないで済むのかな)


駐輪場に着くといつもの23番の駐輪ラックに自転車を停めた。