13時00分
昼食を終えた陽は、暇つぶしにテレビゲームをはじめた。いつものサッカーゲーム。
ザーッ
カチャカチャ
キュッ
聖は食器を洗っていた。
先日、引退したサッカー選手がテレビの中では元気に動き回っていた。
「みんな歳を取るんだよな…」
そんな当たり前のことを陽は思った。自分が33歳だなんて…信じられない。そして、聖がもうじき30歳になるなんて。特に聖の30歳というラインは、陽にとって何とも言えない重いものだった。
そして今日もどうしていいかわからず、時間だけ流れていく。
13時50分
「おっ、もうこんな時間か」
陽はテレビゲームのスイッチを切った。聖の方を見ると、聖はスマホを眺めていた。
「聖、何見てんの?」
聖は目を挙げて陽に言った。
「ブログだよ。龍が見える人のブログ。人には必ず一柱(ひとはしら)の龍が付いてるんだって」
陽は怪訝そうな顔をした。
「龍?龍ってドラゴンの龍?一柱?なにそれ?」
陽はそう言いながら、聖に顔を近づけてスマホの画面を見つめた。
「何この金髪の人?めっちゃ怪しい。龍?スピリチュアルってやつ?」
「でも、すごく面白いこと書く人なんだよ。今度、本も出版するんだって。全国で講演会もあるんだって。あ、今日、名古屋であるみたい」
「ふ〜ん。頼むから変なのにハマらないでくれよ。ま、聖は大丈夫だけど」
「心配しないで〜」
聖はクスクスと笑った。
「じゃ、オレそろそろ行くわ。今日は15時からだよ」
「うん、気をつけてね。あれ?そろそろ朴ちゃん、戻って来る頃じゃない?」
「うん、確か今日から復帰だと思うよ」
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陽は自転車を漕ぎながら駅に向かった。
(スピリチュアルか…。自分にそんな能力があったら楽だろうな。先のことで悩んだりしないで済むのかな)
駐輪場に着くといつもの23番の駐輪ラックに自転車を停めた。