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【新古事記011】研修生

午前07:45

 

(ここまでくればもう一息だ)

 

航はそう思った。

 

「おはようございます」

「おはようございます」

 

日勤の女性2人がフロントに入ってきた。

 

朴さんと航は2人に業務の引き継ぎを始めた。といっても、航はただ横に突っ立て朴さんの話を聞いているだけだった。

 

2人のうち、1人は20代前半と思われる女性だった。左胸には航と同じ「研修生」と記されたバッチを付けていた。おそらく新卒で入社したのだろう。

 

航には45歳の自分と彼女が同じ研修生であることが滑稽に思えた

 

もう1人の女性に朴さんが楽しそうに話しかけていた。

 

「最近、ようちゃんと勤務被んないんだよねー」

 

航は夜勤専属のため、日勤勤務のメンバーとコミュニケーションをとることはほぼ皆無だった。入れ替わりで働いているのだから接点の持ちようがない。実際、この2人の名前もまだ覚えていないくらいだった。

 

航は朴さんの会話を聞きながら

 

「この女性が浅間さんの彼女なんだな」

 

と察した。

 

明るくハキハキとしていて、言葉遣いも丁寧。スッと背筋が伸びていて姿勢も良い。

 

きっとご両親に大切に育てられたのだろう。

 

20年後、自分は娘にとって果たして良い父親になっているだろうか?

 

午前08:00

 

朴さんが言った

 

「さ、氷川さん、時間ですよ。帰りましょう」

 

航は壁に貼られたシフト表に目をやった。夜勤明けのせいか、それがボヤけて見える。

 

「朴さん、ご指導ありがとうございました。五十嵐さん、お先に失礼します」

 

続いて女性2人に頭を下げ、航は更衣室に向かった。

 

着替え終えると社員通用口を出て、自宅に向かって歩き出す。

 

「悪くない」