午後6:40
「いただきまーす」
陽と聖はテーブルを挟み向かい合っていた。テレビのニュースでは、沖縄の基地問題を取り上げていた。基地反対派が「ジュゴンの海を守れー」と叫んでいた。
それを見て聖は呟いた。
「ジュゴン、かわいそうだね」
「まあね。でも、日本はアメリカに気を使わなきゃいけないんでしょ。アメリカが利益を得るために基地は必要なんじゃないの?」
陽は小さい頃からアメリカの属国のような日本が好きではなかった。しかし現実的にアメリカの機嫌を損ねると大変なことになりそうだ…何となくそういう風に感じていた。大統領選があれば「親日家」の候補者に勝って欲しいと願った。「嫌日家」の候補者が優勢…なんて聞けば不安になった。
もとを正せば戦争が原因じゃないか?なんで日本は戦争なんてしたんだろう?あんな馬鹿デカイ国に勝てるわけないのに?
「続いてスポーツコーナーです」
陽の目はテレビに釘付けになった。スポーツ全般が好きだったし、大リーグや欧州サッカーには特に興味が強かった。日本の野球やサッカーも好きだったけれど、国外のスポーツはスケールが違う。
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「ようっ!手と口が止まってるよ」
聖が不機嫌そうに言った。
「あ、ごめん、ごめん」
陽はすぐに謝った。陽と書いて「ひなた」と読むが、聖はもちろん、親しい友人たちは陽のことを「よう」と呼んでいた。
陽は気まずくなり、取り繕うように聖に言った。
「最近、仕事はどう?」
「どうって?そもそも同じ職場で働いているじゃない!」
聖はぶっきらぼうに答えた。
「いや、ほら、五十嵐さんのこととかさ…仕事量増えちゃって、ものすごく大変そうじゃん」
少し間を置いて聖は答えた。
「そうね、五十嵐さん、大丈夫かしら…」