掃除を終えた陽は、バッグから洗い物を取り出し、洗濯機に放り込んだ。その時、さっき持ち帰った求人情報誌に気がついた。
洗濯機を回し始めるとソファーに座り、なんとなく求人情報誌を眺め始めた。時折目に入る「応募条件:30歳まで」という文字。陽は胃が締め付けられるような感じがした。33歳。時間がたつほどに、どんどん選択肢が狭まっていく。可能性が目減りしていく。
陽は求人情報誌を投げ捨て、テレビゲームのスイッチを入れた。聖と同棲する前から持っている型落ちしたゲーム機。ソフトは1つしか持っていなかった。画面の中ではすでに引退したサッカー選手が当時のまま元気な姿でピッチの上を躍動していた。
「33歳か。オレがサッカー選手だったら引退してる頃かもな」
そんなことを思ってますます気が滅入ってきた。
ピーピーピー
洗濯機のアラームが鳴った。陽はゲームを一時中断し、洗濯物をベランダに干した。そして、洗濯物を干し終えると、再びテレビゲームを始めた。
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午後06:15
ガチャ
「っ!!い、いらっしゃいませ…」
陽はその音に反応し、そう口走った。
「何言ってるの〜、ただいま」
声の主は聖だった。陽はテレビゲームをやりながら、いつの間にか眠っていたらしい。
「なんだ聖か。おかえり」
聖はニコニコしながら部屋に入ってきた。陽は放り投げられた求人情報誌に気づき、慌てて拾いバッグにしまった。
「今からすぐご飯作るから」
聖はそう言うとキッチンに立った。