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【新古事記036】18歳のフットボーラー

11時05分


帰宅した陽は、そのままベッドに潜り込みたかったが思いとどまった。


冷蔵庫を開け、ラップされたカレーとご飯を取り出し電子レンジに放り込む。


チーン!!


皿に盛り付けると、再び冷蔵庫を開け麦茶を取り出そうと手を伸ばす。しかし、手に取ったのは発泡酒だった。誘惑に負けた。


プシュッ!!


「いただきまーす」


陽は左手でスマホを操作しスポーツニュースをチェックしながら、右手に持ったスプーンでカレーをかきこんだ。


「うまうまい。聖のカレー、うまい」


誰も聞いていない独り言。


左手の親指でスマホの画面をスクロールさせていると驚きのニュースが目に入った。


「マジかよ…」


18歳になったばかりの日本人サッカー選手がスペインの名門クラブに移籍すると報じられていた。


飛ばし記事だろう?と思ったがどうやら正式に決まったようだ。


彼のことは注目していたし応援していたが、陽は自分の人生と比較し、なんとも言えない虚無感に襲われた。


(これが同じ人間だろうか?)


彼は18歳にして俺の一生分より価値のある生き方をしている。いや、一生どころじゃない。18年で俺の1,000年?いや、もっと価値のある生き方をしているかもしれないと思った。


(俺は33歳にもなって何をやっているんだ…)


一気に食欲がなくなってしまった。陽はカレーを3分の1ほど残し、ラップをかけ冷蔵庫にしまった。


(俺が聖のカレーを残すなんて…重症だよ)


一気に発泡酒を飲み干して、そのままベッドに転がると、あっという間に深い眠りに落ちた。


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ブルルルルルルル


「ん?」


陽は走り去るバイクのエンジン音で目を覚ました。


「郵便屋さんか…」


時計を見た。


17時05分


「やべ、もうこんな時間!!掃除機かけとかなきゃ」


18時すぎには聖が帰ってくる。陽は掃除機をかけ、洗濯物を取り込んだ。


「あ、そういえば郵便屋さん来てたよな…」


陽はポストを確認した。聖宛に荷物が届いていた。