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【新古事記004】2日目②

仮眠室に入ると、航はすぐにスマホのアラームをセットした。


そして、


終戦いつ」


と検索した。


「1945年8月15日」


やはり自分の認識に間違いはなかった。9月2日とする解釈もあるけれど、1945年には違いないし、朴さんの言う1950年ではあり得ない。


航は少し気になり、続けて


「戦争1950年」


と打って検索してみた。


すると


朝鮮戦争(1950年6月25日〜1953年7月27日)」


と画面に表示された。


航は「あっ」と思った。多くの日本人にとって戦争といえば第二次世界大戦大東亜戦争)を指すと思うが、国が変われば当然その認識も異なる。確定ではないけれど、朴さんの言っていた「戦争」は朝鮮戦争を指す可能性が高い。


それにしても…


即座に「1950年」と答えた朴さんは流石ではないだろうか?


仮に日本の30歳の若者に「終戦は西暦何年?」と質問したとして、どのくらいの割合で正解が返ってくるのだろう?


いや、決して彼らを責めるわけではない。自分も30歳の頃に聞かれたら、正確に答えられたか怪しいものだ。いや、自分の同年代でも答えられるかどうか。近代史なんかまともに習った記憶がない、それが日本だ。


航はハッとして、考えるのをやめた。今は貴重な仮眠時間だ。身体を休めなければ。そしてすぐにベッドに横になった。


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午前3:45


スマホのアラームが鳴った。航は朦朧とする意識のまま反射的に身体を起こした。眠りついたのが1秒前のことのように思える。まるでワープしたような感じだ。


すぐに身支度を終え、フロントバックに向かうと、石松さんが職場のパソコンでYouTubeを見ていた。


「おはようございます」


「おはようございます。少しは休めましたか?」


石松さんがこちらに目を向けて言葉を返してくる。


「はい、大丈夫です」


パソコンの画面にはビートルズの演奏が流れていた。


ビートルズですか?」


石松さんは嬉しそうに言った


「ええ、私、ビートルズど真ん中の世代でしてね。衝撃的だったんですよ、当時。ビートルズ、ご存知ですか?」


「ご存知もなにも、超有名ですからね。僕の世代でもファンは多いですよ。友達が大好きで…あ、女性なんですけど。Rainって曲が特にお気に入りだと言っていました」


「え?Rain?聞いたことないなぁ」


石松さんはすぐに検索するとYouTubeでRainを聴き始めた。


「これは初めて聴きました。教えてくれてありがとうございます」


「あれ?石松さん、ネームプレート逆さまですよ」


「ああ、いけない。ありがとうございます」


石松さんはネームプレートを直した。それをみて航は少しホッとした。


ピンポーン


フロントのベルが鳴った。航と石松さんはすぐにフロントバックからカウンターに出て行った。


そこにいたのは身長の高い、中東系の顔立ちをした男性だった。


彼は英語で何かを訴えていた。申し訳ないが航は英語が全く出来ない。それは採用面接の際にも伝えてあった。


すると石松さんが流暢な英語を話し始めた。やがてニコやかな笑顔でその男性は去っていった。


航は失礼ながら思った


「人は見かけによらない」