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【新古事記163】聖の神宮大麻

「先ほども言いましたけど…


あなた達のご先祖様、喜んでいらっしゃいますよ。


特に現代は神道にも仏道にも触れずに一生を終える人はとても多いのです。


その動機が何であろうと、お休みの日にわざわざ神社に足を運ぶ。それを喜ばない神様やご先祖様がいるはずがありません」


陽は巫女さんの話を聞きながら思った。


(もし聖と付き合っていなかったら…


オレは神社なんて来なかっただろうな。


古事記だって読まなかっただろう)


そう考えると目の前にいる暑苦しい兄妹や巫女さんとの出会いも不思議なものに思えた。


聖は言った。


「私、今日の待ち合わせを龍橋神社にしたのは、この神社で神宮大麻を買いたい…じゃなかった授かりたかったからなんです。


お姉さん、神宮大麻いただけますか?


あ、でも…家には神棚ありませんが…」


巫女さんはにこりと笑った。


「大丈夫です。


さっきお兄さんがおっしゃったように身の丈にあったやり方でいいんです。


神様もご先祖様も、きっとあなたたちが無理する姿なんて見たくないでしょう。


少なくとも…


私にとって神様は、とてもおおらかで優しい存在です。


ちょっと待っていてください」


巫女さんはそういうと「参集殿」と書かれた建物の中に入っていった。


ノブナガが言った。


「おい、カナコ!!


あの巫女さん、やたらとオレのことを持ち上げるというか…


なんかこう…フィーリングが合う気がしないか?」


カナコが即答した。


「完全に気のせいじゃろ」


「住まいは大阪って言ってたよなー


結婚して大阪で暮らすのもいいなー。実家の岡山に近くなるし…」


「お兄ちゃん…


ひーちゃんが見てるわよ」


「うっ!!しまった…


オレとしたことがっ!!」


それを見た聖が楽しそうに笑った。


その時、参集殿の窓が開き巫女さんの姿が見えた。


「お待たせしました。


どうぞ、こちらへお越しください」