「ザビエルは知っての通りキリスト教の布教を目的として日本に来たわけだが…」
陽と聖は頷いた。
「おい、もやし!!
ザビエルの本名知ってるか?」
「え?
フランシスコ・ザビエルですよね?
歴史の授業で習いました」
聖が一歩前に出た。
「まさか!?
フランシス子・ザ・ビエル!!?
女子だったとか!?」
カナコが笑った。
「あははは
ひーちゃん、それはないじゃろ」
ノブナガは人差し指を立て、横に振った。
「チッチッチッ!みんな、甘いな。
ザビエルの本名は、
フランシスコ・ジャッコア・アスピルクエタ・イ・エチェベリア
だ。
はっきり言って、ニニギと同等…いや、それ以上に難しい」
カナコが言った。
「そのウンチク、いらないでしょ…
ひーちゃんの前だからって知識人ぶろうとしてるの見え見えだから」
ノブナガは咳払いをした。
「カナコ、お前はいちいちうるさいんじゃっ!!
さて、我々の祖先はザビエルに聞いた。
「そのありがたい教えを知らずに死んだ私たちのご先祖様は今どうしているのか?」と」
聖は言った。
「おお!ご先祖さまっ!!
鋭いツッコミ!!」
ノブナガは続けた。
「ザビエルはこう答えた。
「残念ながら洗礼を受けなかったものは地獄に落ちました。だからここにいるみんなは洗礼を受けて天国にいきましょう」」
すると我々の祖先たちは涙を流し答えた。
「ご先祖様を置いて自分たちだけ幸せになるわけにはいかない。オレはご先祖様のいない天国より、ご先祖様のいる地獄に行く方がいい」」
陽と聖は驚いた。カナコは静かに聞いていた。
「ザビエルはこの回答に絶句する。そして、およそ2年後、ザビエルは精根尽き果て日本を離れたのだ。
日本人にとって魂の救済というのは個人の問題ではないのだ。日本人の魂は神代の頃から途切れることなく連綿と繋がっておる。個人だけの幸せなどありえんのだ。
残念ながら、現代の日本は個人主義的な考えが広まっているようにオレは感じるのだ。
まったく嘆かわしいことだ!!!
もやし、お前の命も決してお前だけのものではない!世のため人のため、日本のためにその命を使え!!ご先祖様の気持ちを忘れるな!!
わかったな!!?」
陽は思った。
(この命が自分だけのものではない?
だからって、こんなオレに何が出来るっていうんだろう?)
聖が言った。
「スサノオさんはお母さんと暮らせるならどんな劣悪な環境でも構わない、そんな気持ちだったのかなぁ…
ノブナガさん、日本人って素敵ですね!!」
「聖ちゃん、その通り!!
オレは日本人に生まれたことを心から嬉しく思う!!
ご先祖様、じいちゃん、ばあちゃん、父上!!
そして、MMKT!!ありがとう!!
カッーカッカッカッカッ!!」
ノブナガは高らかに笑った。