巫女さんは笑った。
「大丈夫ですよ。
お兄さん、左手から清らかなエネルギーが発せられていますね。
そのエネルギーがお兄さんを過去の怨念から護ってくれています」
それを聞いたカナコはノブナガの袖をまくった。ノブナガの左手首には広末さんに買ってもらったブレスレットが巻かれていた。
「お兄ちゃん…
それ、前に広末さんに買ってもらったパワーストーンだよね?
何だかんだ言ってそのブレスレットに頼ってるの?
やっぱ明智光秀にブルってるの???
うわぁ〜〜、なんか女々しい…」
「ば、馬鹿者!!
己に与えられた資産は余すことなく使う!!
それが須賀ノブナガの人生哲学よ!
カーッカッカッカッカッ!!」
「はぁ?
意味わかんないんですけど?」
巫女さんが言った。
「お兄さんの言ったことはある意味正しいと思います。
人は、一人の力で生きているのではありませんから」
巫女さんは陽の方を向いた。
「あなたもね、もっと色々な力に頼っていいんですよ。
今いるお仲間だけでなく、実際に目に見えなくてもあなたをサポートしてくれるたくさんの存在がいます。
あなたの後ろにもたくさんのそういう存在がいるんです。
これまで途切れることなくたくさんの命が繋がり、今のあなたがいる。
日本人は過去にも未来にも魂は繋っていると考えます。
私たちは連綿と繋がれた魂の今を生きているにすぎません。これを「中今」と言います」
「中今?
自分の命が自分のものではない?」
陽は巫女さんの言っていることがよく理解出来なかった。
ノブナガの顔がパッと明るくなった。
「聞いたか、もやし?
さっきオレが言ったことと同じだろ?
ご先祖様のこと、忘れんじゃねーぞ!!」
巫女さんが言った。
「お兄さん、いい事いいますねー。
私、日本の教えを一言にまとめるとするならば…
「ご先祖様を大切にしよう」
こういうことだと思うんです」
ノブナガの表情がみるみるうちに崩れた。
「お姉さん!!
僕たちやたらと気が合いますね!!」
そういうと、ノブナガは目を輝かせながら巫女さんの手を取った。