「よし!」
そういうと陽は「古事記まんが」を閉じた。
「聖、オレもとりあえずだけど読み終えたよ」
聖はニコリと笑うと言った。
「もう次の駅で降りるよ」
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09時35分
陽と聖は駅を降り商店街を歩いていた。
「あ、見て見てヨウ!!」
聖が言った先に目を向けると、そこには10人ほどの行列が出来ていた。
「おお、あのお姉さん…じゃなかったお兄さんのお店、めっちゃ人気店になってる!」
レスターの店主アラキさんのことをスピリチュアル界のご意見番シキカワ☆ワンダラーが雑誌で記事にしてから、スピリチュアル好きな人たちが押し寄せているらしかった。
「お兄さんにも挨拶したいけど、これじゃちょっと無理かもねー」
レスターを右手に通り過ぎると、すぐ左手に極空ラーメンが見えてきた。こちらはオープン前で、まだシャッターが降りていた。
「楽しみだなー、極空ラーメン」
「あんまり期待するなよ〜〜
ノブナガさん、味が落ちたって言ってるんだろ?」
陽はそういうと少し憂鬱になった。
(ノブナガさん、あんまり会いたくないなー
あの妹も、熱くていい人なのはわかるんだけど、完全にペースを持っていかれちゃうというか…
今日も聖と結婚しろって焚きつけらるんだろうなぁ…)
商店街を抜けると静かな住宅地があり、やがて杜が見えてきた。
「着いた着いた」
聖はそういうと目を瞑り、大きく息を吸って吐いた。
「あー、ここは気持ちが良いところだねー」
赤い鳥居の奥に石で出来た双龍鳥居が見えた。二人は龍橋神社に到着した。
陽は時計を見た。
09時50分
まだ兄妹は来ていないようだった。