【新古事記190】極空ラーメン
「本当にここにするのか…
オレ様は気がすすまないのだが…」
4人は「極空(ごくう)ラーメン」の前にいた。
陽はそっと店を覗いた。お昼時なのに店内はガラガラだった。
「たしかに…お客さんぜんぜんいませんね」
「だろう?
昔はオレ様も良く食べに来ていたんだ。
しかし最近は味が落ちてな…久しく食べに来ておらんかったのだ」
「わたし、近所だけど来たことない。
たしかに昔は評判良かったよねー」
カナコが言った。
「でも〜〜
気になるんですよね、岡山ラーメン」
聖はミラーサングラスを少し下にズラし、裸眼で店内の様子を伺った。
「ひーちゃん、大門みたい〜〜
カッコイイ〜〜
…って!!
岡山ラーメンじゃなくて和歌山ラーメンっ!!
ブヒー」
カナコが聖に抗議した。
店舗の外壁には求人募集のポスターが貼られていた。陽は声を出しながらそれを読んだ。
「学歴不問・前科不問…
先輩も後輩も、スタッフはみんなオール前科!!
ひどいコピーだな…
オレ、こんなところで絶対働きたくないや」
ポスターの右下には創業者の顔写真が載っていた。髪型は白髪混じりのVカット、スクエア型のメガネをかけている。年齢は50代半ばくらいだろうか。
「この人…ノブナガさんより人相悪いですね…」
「キャハハハハ!!
ヨウくん、もっと言え!もっと言え〜〜!」
「もやしっ!きさま〜〜っ!!」
「お兄ちゃんとヨウくん、仲良くなってきたね〜〜」
カナコはニヤリとした。
「ちっ!!」
ノブナガは舌打ちするとさらに続けた。
「聖ちゃん、悪いことは言わない、ここはやめておこう。
この商店街、美味しいお店いっぱいあるから」
「聖、オレもそう思う」
陽はノブナガに同意した。