「ふーん…関西を中心に活動してるのか」
航は彼女が古事記を広めようとある関西で孤軍奮闘している姿を想像した。
「いつか、会えたらいいな」
航は洗い物を洗濯機に放り込んだ。シャワーを浴び時計に目をやった。
12時45分。
「さ、夜に備えて寝ないと」
航はスマホのアラームを15時45分にセットするとベッドに潜り込んだ。
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帰宅した陽は航からメッセージが届いているのに気づいた。
「あ、氷川さんからだ。
へー、お礼のメッセージか。こっちからお願いしたのに…」
陽も航へメッセージを返した。
14時00分
テーブルの上に聖の作ったおにぎりが置いてあった。陽はカップラーメンにお湯を注ぎ、時間が経つのを待った。
陽は2枚の名刺を手に持ち眺めていた。
「なんとなく…なんとなく世界が広がった気がする…」
航を誘ったのは陽だったが、まさかその先に空中さんとの出会いがあるとは思いもよらなかった。二人ともこれまで自分の周りにいたのとは異なるタイプの大人だった。
次に『古事記のお話会』のフライヤーを取り出した。
「あびこ…みなみさん、かな?
大阪の人なのかー」
フライヤーの右下に簡単なプロフィールと小さな写真が載っていた。
スーツ姿に赤い蝶ネクタイ。大きめなメガネをかけている。
「なんで大阪の人が空中さんのお店でイベントやるのかな???
『古事記のお話会』か。僕より聖の方が興味を持つかもしれない。
それに…」
陽は航にも空中さんにもまた会いたいと思っていた。
「おっと」
陽はカップラーメンの蓋を外すと、遅めの昼食を食べ始めた。
「おにぎりにカップ麺。これがうまいんだよなー」
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昼食を終えた陽は、さっき買ったばかりの本をバッグから取り出した。
『寝不足になる古事記』
陽はページをめくり始めたが、夜勤明けの体に加え、お腹が満たされたことであっという間に睡魔が襲ってきた。
陽はそのままソファに横になった。