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【新古事記102】一人参り

陽が頭を下げた、その時だった。


ビューーー


「お、とと…」


背後から強い風が吹き、押し込まれるように陽は鳥居をくぐっていた。


「げっ!!」


陽は一人で変な声を発した。早く帰って眠りたいという気持ちも強かったが、境内に足を踏み入れてしまったからには、このまま帰ってはいけないような気もした。


「少しだけお参りしていくか…」


鳥居をくぐり、まっすぐ進むと左側に手水舎があった。


「これ、どうやるんだったっけな???」


陽は説明書きを見ながら、手水舎の前に立つとと龍の口の先端から水が流れ出した。


「おお!」


どうやらセンサー式になってきるらしい。陽は柄杓に水を貯めると、ぎこちなく手と口を清めた。


陽は左のポケットを探りハンカチを取り出すと手を拭いた。


しばらく進むと両側に狛犬が設置されていた。


さらに進み、小さな階段を登ると参道を挟むように石像が設置されていた。両体とも手に弓を持ち背中に矢を背負っている。


「あ、これ…なんだっけ…」


陽は龍橋神社の巫女さんの話を思い出そうとした。


「たしか、神様を守ってるんだったよな」



「そうだ!思い出した。


随身像だ。


龍橋神社の随身像はアマテラスが隠れた洞窟を守ってる神様だって…そんな話だったよなー


これも同じ神様なのかなぁ???」


陽は随身像に頭を下げた。向かって右の随身像は口を半開きにしている老人のようだった。左は口を真一文字に閉じ、こちらは青年に見えた。


「もしかして、親子なのかな?」


陽はそんなことを想像し、歩を進めた。


拝殿の前に立つと、右のポケットから小銭入れを取り出した。小銭入れに人差し指を入れ、コインを動かす。


「これでいいだろう」


陽は五円玉を取り出すと、賽銭箱に放り込んだ。

 

目の前に垂れ下がった3本の鈴紐がある。陽は真ん中の一番太い鈴紐を振った。シャランシャランという気持ちの良い涼やかな音が辺りに響く。


陽は説明書きを見ながら、二度と深く頭を下げ、柏手を叩いた。


パチッ、パチッ


小気味好い音を立てたかったが、当たりどころが悪かったらしくうまくできなかった。