古事記スクール

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【新古事記111】軽い挫折

航は名刺を差し出した。男性は品のいい黒皮の名刺入れを胸のポケットから取り出した。


『鳥海比呂志』


「鳥海さんとおっしゃるんですね。珍しいお名前ですね」


「そうかもしれません」


そこへ…


「氷川さーん、江本さーん!!」


吉川さんがやってきた。吉川さんはタオルでで顔の汗を拭った。そして、時計を見た。


「18時59分。ギリギリ間に合いました」


そういうと大きな声で笑った。そして続けた。


「しゃぶしゃぶとは豪勢ですねー」


江本さんが言った。


「すみません。もっとカジュアルなお店にしたかったのですが…どこもいっぱいで」


「いえいえ、いいんです。お肉大好きですし。


予約してくださってありがとうございます」


「とりあえず中に入りましょうか」


鳥海さんの一声で皆はお店の中に入った。


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「さ、私もお風呂入っちゃおっと」


聖の姿が消えると、陽は冷蔵庫から発泡酒を取り出してきた。


プシュ!!


缶を開け、一口飲む。


「あー、うまい」


陽はそのままテレビゲームに手を伸ばしかけたが思いとどまった。そしてソファに座ると『寝不足になる古事記』の続きを読み始めた。


「うーん、、、


全然面白くない…


氷川さんがコレを薦める意味がわかんないなー」

リビングの向こう側からドライヤーの音が聞こえてきた。


「ふぅー、気持ちよかった。


ひーちゃん、生き返りました。


ん?ヨウ、それは空き缶?」

 

リビングに戻ってきた聖はテーブルの上にある発泡酒を指差した。


「ん?ああ、もう空だよ」

 

「まったくもう!」


聖は空き缶を手に取ると水ですすいで捨てた。


「空き缶はすぐ捨てるっ!」


「はーい」


「ん?ヨウ、それは?」


「うん、掛川君に借りたアドラーの本」


古事記は?」


「うーん…軽く挫折中


んでさ、こっちの本、めっちゃおもろい!」


「へー、そうなんだー。


ん?」


聖はスマホを手に取った。


「おお、我が一生涯の友より連絡が来ておる!」


「奈帆ちゃん?」


「うん!」


聖は微笑みながらスマホの画面を見つめた。