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【新古事記051】スピリット

「お待たせ、「生」はあなた達ね?」


店を一人で切り盛りしているであろうオーナーがドリンクを運んできた。


「と…これがあなたのね」


オーナーはカナコの前にジンジャーハイボールを置いた。オーナーはニコリともせず、どこか虚ろげで、心ここに在らずという雰囲気だった。


「んじゃ、とりあえず…」


「かんぱーい!!」


ゴクゴクゴクゴク…


「いやー、お昼前から飲むビールは最高っすねー」


大男が言った。


「しかも、めっちゃうまい!!なんなのこれ、なんでこんなにうまいの!?」


大男はそういうと、ドリンクを運んできたオーナーに目が釘付けになった。


その肌は透き通るように白く、金色に染め上げた髪がよく似合っていた。


「お、お姉さん…僕と七夕の夜にデートしませんか?」


カナコは大男の頬を摘んだ。


「イタタタ…やめろ、カナコ!!冗談だ、冗談!!」


カナコは言った。


「もう酔っ払ったんかい!!

 

いい歳して見境なくナンパするんじゃないっ!!」


「なんだと!!ナンパはオレのライフワークだ!!


オレは現代のオオクニヌシとなる男だ!!

 

カーッーカッカッカッカッ!!」


カナコは大男を無視した。


「お姉さん、すみませんねぇ…


でも、本当にきれいなお肌。金髪もお似合い。羨ましい」


オーナーはカナコをジッと見つめていた。


「お、お姉さん…ちょ、恥ずかしいんですけど」


オーナーは表情を変えることなくに言った。


「あなた…


あなたには高杉晋作のスピリットが宿っているわ」

 

「た、高杉晋作???私に?」


オーナーは構わず続けた。


「あなたの魂は普通の人の何倍も輝き、尋常ではない熱を持っている。ただ…」


「ただ??」


カナコは少し前のめりになった。


「その身体は、あなたの魂レベルにそぐわないわ。肉体という器が小さすぎるのよ、華奢すぎるの。F-1のエンジンを積んだ軽自動車のように見えるわ」


「え?でも仕方がないですよね?」


「性転換なさい。私のように。


男のボディを手に入れるのよ」


カナコは驚いて言った。


「せ、性転換???


ってことは、お姉さんでなくお兄さん!?」


大男は無意識のうちにオーナーの股間を凝視していた。


「人の股間をマジマジと見つめるのはやめてもらえる?神社の狛犬じゃないんだから。


ちゃんと付いてるわよ、新品がね。


なんなら手術のことも話しましょうか?死ぬほど痛かったわよ」


大男は言った。


「い、いや、結構です…」


「あ、言い忘れてましたけど、そのドリンク達には宇宙エネルギーを下ろしていますから。美味しくて当然よ」