「お待たせ、「生」はあなた達ね?」
店を一人で切り盛りしているであろうオーナーがドリンクを運んできた。
「と…これがあなたのね」
オーナーはカナコの前にジンジャーハイボールを置いた。オーナーはニコリともせず、どこか虚ろげで、心ここに在らずという雰囲気だった。
「んじゃ、とりあえず…」
「かんぱーい!!」
ゴクゴクゴクゴク…
「いやー、お昼前から飲むビールは最高っすねー」
大男が言った。
「しかも、めっちゃうまい!!なんなのこれ、なんでこんなにうまいの!?」
大男はそういうと、ドリンクを運んできたオーナーに目が釘付けになった。
その肌は透き通るように白く、金色に染め上げた髪がよく似合っていた。
「お、お姉さん…僕と七夕の夜にデートしませんか?」
カナコは大男の頬を摘んだ。
「イタタタ…やめろ、カナコ!!冗談だ、冗談!!」
カナコは言った。
「もう酔っ払ったんかい!!
いい歳して見境なくナンパするんじゃないっ!!」
「なんだと!!ナンパはオレのライフワークだ!!
オレは現代のオオクニヌシとなる男だ!!
カーッーカッカッカッカッ!!」
カナコは大男を無視した。
「お姉さん、すみませんねぇ…
でも、本当にきれいなお肌。金髪もお似合い。羨ましい」
オーナーはカナコをジッと見つめていた。
「お、お姉さん…ちょ、恥ずかしいんですけど」
オーナーは表情を変えることなくに言った。
「あなた…
あなたには高杉晋作のスピリットが宿っているわ」
「た、高杉晋作???私に?」
オーナーは構わず続けた。
「あなたの魂は普通の人の何倍も輝き、尋常ではない熱を持っている。ただ…」
「ただ??」
カナコは少し前のめりになった。
「その身体は、あなたの魂レベルにそぐわないわ。肉体という器が小さすぎるのよ、華奢すぎるの。F-1のエンジンを積んだ軽自動車のように見えるわ」
「え?でも仕方がないですよね?」
「性転換なさい。私のように。
男のボディを手に入れるのよ」
カナコは驚いて言った。
「せ、性転換???
ってことは、お姉さんでなくお兄さん!?」
大男は無意識のうちにオーナーの股間を凝視していた。
「人の股間をマジマジと見つめるのはやめてもらえる?神社の狛犬じゃないんだから。
ちゃんと付いてるわよ、新品がね。
なんなら手術のことも話しましょうか?死ぬほど痛かったわよ」
大男は言った。
「い、いや、結構です…」
「あ、言い忘れてましたけど、そのドリンク達には宇宙エネルギーを下ろしていますから。美味しくて当然よ」