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【新古事記103】陽の祈り

手を合わせながら陽は神様に意識を向けようとした。しかし、色々な想いが湧いてきて集中できなかった。


(さっきの柏手…うまく鳴らなかったけどあれで大丈夫かなあ?


そもそもお賽銭は五円でよかったのかな?少なすぎ?


いや、でも給料少ないし、ただ払うだけでモノを買うわけでもないしなぁ…


あ、そうだ!願い事考えなきゃ…


えーと、えーと…


そ、そうだ


神様、どうか聖と結婚して幸せに暮らせますように…)


陽はもう一度深々と頭を下げ、目をあけた。


「ふぅ」


陽は一息つくと辺りを見回した。陽以外に誰もいなかった。拝殿の横に古びた建物があった。


陽が近づくとそこには「弁天堂」と書かれていた。お堂の中にさらに小さなお堂があった。大きな建物が小さな建物を風雨から守っているように見えた。小さなお堂の前面には、天女のような小さな人形が置かれていた。


「社とか宮とか堂とか…色々あってよくわからないなぁ…」


弁天堂のお賽銭箱には正三角形を3つ組み合わせた神紋が施されていた。

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「かっこいい!!トライフォースみたい!!


弁天堂Switch!!なんちゃって。


…ん?」


鈴紐には小さな鈴がいくつも取り付けられていた。どうやら恋愛成就の願掛けらしい。


「…ここもお参りしとくか」


陽は小銭入れを取り出した。五円玉がなかったので、賽銭箱に十円玉を放り込み目を閉じた。心を鎮め、手を合わせた。


しばらくして目を開けると…


「ん?なんだ?」


小さなお堂の上あたりに、小さな雲のようなものがグルグルと渦を巻いていた。


「え?」


陽は目をこすった。


白い雲は薄くなり、すぐに消えた。


陽は少し考えて呟いた。


「よし、見なかったことにしよう。


うん、気のせいだ」


陽は弁天堂に背を向けた。左手に社務所と書かれた看板を掲げている建物が見えた。