古事記スクール

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【新古事記098】名刺交換

航とオーナーは陽の目の前で名刺交換をしていた。


「あの〜…」


陽は2人のやりとりに割って入った。


「?」


「ぼ、僕にも名刺くれませんか?」


航は笑った。


「もちろんです」


航は一枚の名刺を取り出すと、両手でもち丁寧に陽に渡した。航に渡された名刺には『古事記スクール』と書かれていた。


(ス、スクール?


氷川さん、学校やってんのか?)


その時、マスターが話しかけてきた。


「よかったら僕の名刺もどうぞ」


そう語りかけるオーナー声は魅力的だった。


「あ、ありがとうございます」


陽は慌てて受け取った。


名刺には


『ワカン・タンカ村村長 空中天真(そらなかてんま)』


と書かれていた。


(そ、村長!!この人、村長なのか?)


陽は無意識のうちに声のトーンをあげて言った。


「氷川さん、学校経営してるんですか?


そ、空中さん?村長なんですか?


ワカン・タンカ村って、どこの国ですか?空中さん、日本人じゃないんですか?」


陽は空中さんの顔をマジマジと見た。改めて見ると彫りの深い顔をしている気がする。日本人ではないのかもしれない。


空中さんは笑って言った。


「さっきも言いましたけど、米子出身の日本人ですよ」


航はニコニコしながら言った。


「あー、浅間さんは良い人だな。


僕にもそういう時期がありました。肩書きにビビっちゃうんですよね?


でも、あんまり肩書きとか気にしない方がいいです。


古事記スクールっていうのは実際に学校があるわけでなく、いわゆる屋号ってヤツです。


空中さんもそうですよね?」


「ええ。でもちゃんと理念を持ってやってますよ」


「それは僕もです」


陽は早とちりをしたことに気づき顔が熱くなるのを感じた。


「屋号…ですか?


でもお二人とも…その、僕はよくわからないけどフリーランスってヤツですよね?


自分のビジネスを持ってるなんてすごいです」


航は言った。


「凄くないです。


フリーランスって言ってる人の大半はフリーターですよ」


航と空中さんは声を合わせて笑った。


「だって本当にうまく言ってたら、僕だってフロントの夜勤をやってる暇なんかないでしょ?


昨日も言いましたけど…よく知らない人のことなんかすぐに信じちゃダメですよ、肩書きもね」