「そういえば…
龍橋神社の巫女さんが神札(おふだ)がどうとか大麻がどうとか言ってました。
それで聖は興味を持ったようでした」
「素晴らしいことだと思います」
「でも、これだけ科学が進歩した現代に神札を飾るなんて…僕には意味が見出せません。
まあ聖がやる分には止めませんが」
「僕もね、神棚とか仏壇とか…それこそお墓まいりとか。そういうことを一切やらない家庭で育ちました。
今、神棚をお祀りしている家庭なんて少ないでしょうね。
だから、浅間さんの言ってることも分かりますよ」
さらに航は続けた。
「『科学の知』に対して、『神話の知』という言葉があります」
「シンワノチ?」
「はい。例えば浅間さんがインフルエンザにかかったらどうしますか?」
「そりゃまあ、病院に行きますよね、普通」
「じゃあ、昔の人はどうしたでしょうか?」
「うーん、ご飯食べて寝てるしかないですね。重い病だったら死んでしまうかもしれない」
「そうですね、だから昔は『祈る』くらいしか方法がなかったんです。お百度参りって聞いたことあるでしょう?」
「はい、そんなことして治るわけないですけどね。科学の進歩は素晴らしいですね」
「はい、科学はたしかに素晴らしい。科学というのは分けていく学問なんです」
「分けていく?」
「はい、例えば学校のカリキュラム。国語科とか数学科とか、病院なら内科とか外科とか…分けることによって専門性が出てくるわけですね」
「へー、なるほど」
「しかし、僕はそこに弊害があると考えています」
「弊害?
うーん、僕にはなんの問題もないように思えますが???」