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【新古事記088】妄想の世界

「浅間さん、それアウトです」


航はまた笑った。


「え?」


「それ、聖さんのお父さんに絶対言っちゃダメですよ。


僕がお父さんだったら、結婚にバツを出します。


嘘でもいいから…とは言いませんが、『幸せにします』って言いましょう。


日本は言霊の国ですからね」


「え?言霊の国?」


航は構わず続けた。


「それに…厳密には聖さんの幸せは聖さんが決めることですから。


そういう意味では浅間さんは聖さんを幸せには出来ませんね」


「ちょ、ちょっと、氷川さん!!」


陽がそう言うと、2人は笑った。


さらに陽が続けた。


「でも、


現実問題として…


今の給料でやっていける自信がないんですよね」


「そんなことないでしょう?


全然いけますよ。浅間さん、手取りで18万って言ってましたっけ?


聖さんの手取りが仮に15万として…


32万でしょ?全然いけます」


「うーん、まあそうかもしれませんが…


なんか…聖の手取りありきって言うのが受け入れられないと言うか…」


「浅間さん、何をしなきゃいけないかわかってきましたか?」


「え?」


「浅間さんは聖さんと結婚したい。しかし、収入が足りないと思っている。養わなければいけないと思っている。


それ、現段階では妄想です」


「妄想?」


「当たり前のことですけど、今、浅間さんがやらなきゃいけないことは、聖さんと話すことです。


どこかの知らないセミナー講師や45歳にして新人のフリーターでなく、聖さんと話し合うことです。


結婚したいって言いましょうよ」