「浅間さん、それアウトです」
航はまた笑った。
「え?」
「それ、聖さんのお父さんに絶対言っちゃダメですよ。
僕がお父さんだったら、結婚にバツを出します。
嘘でもいいから…とは言いませんが、『幸せにします』って言いましょう。
日本は言霊の国ですからね」
「え?言霊の国?」
航は構わず続けた。
「それに…厳密には聖さんの幸せは聖さんが決めることですから。
そういう意味では浅間さんは聖さんを幸せには出来ませんね」
「ちょ、ちょっと、氷川さん!!」
陽がそう言うと、2人は笑った。
さらに陽が続けた。
「でも、
現実問題として…
今の給料でやっていける自信がないんですよね」
「そんなことないでしょう?
全然いけますよ。浅間さん、手取りで18万って言ってましたっけ?
聖さんの手取りが仮に15万として…
32万でしょ?全然いけます」
「うーん、まあそうかもしれませんが…
なんか…聖の手取りありきって言うのが受け入れられないと言うか…」
「浅間さん、何をしなきゃいけないかわかってきましたか?」
「え?」
「浅間さんは聖さんと結婚したい。しかし、収入が足りないと思っている。養わなければいけないと思っている。
それ、現段階では妄想です」
「妄想?」
「当たり前のことですけど、今、浅間さんがやらなきゃいけないことは、聖さんと話すことです。
どこかの知らないセミナー講師や45歳にして新人のフリーターでなく、聖さんと話し合うことです。
結婚したいって言いましょうよ」